夏蝶の乗るべき風の未だあらず
「方円」2003年9月号雑詠掲載。
夏の代表的な蝶と言えばクロアゲハだろう。大きな羽根をゆっくり広げて、悠然と飛ぶ姿は美しい。しかしこの時見た蝶は飛ばなかった。「風死す」という季語があるが、夏の暑い盛りの凪の状態。あまりの暑さに息苦しくなってくる時がある。そんな時、美しいクロアゲハは、風に乗って飛んでいくという事が出来ないようだ。そんないかにも盛夏という雰囲気を詠んだ句。
現在所属している俳句結社「雲の峰」では、言葉の使い方、文法について、細かくチェックが入る。俳句を20数年やってきたが、未だに言葉の用法について知らない事が多く、大変勉強になる。殊に指摘されるのは「の」の用法だ。例えば今回紹介した句。「夏蝶の乗るべき風」ならば、名詞同士の接続(蝶と風)として使われているが、これが正しい用法。後の「風の未だあらず」は名詞と助動詞(風とない)なので、避けるべき用法という事になる。古語にこういう用法があったような気がするし、例句にも多用されているが、本来は違うのだという。なので、最近はこの「の」については慎重に使うようにしている。そう考えると、今回の句は「夏蝶の乗るべき風はあらはれず」とするべきか。日々良い表現を勉強せねばならない。
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