①鴨足草見送る水の幾重かな
②渓流の絶えざる音や鴨足草
①「方円」2003年8月号雑詠掲載。
②「雲の峰」2023年8月号青葉集掲載。
「鴨足草」とはユキノシタの事。「虎耳草」とも書く。山野の岩や石垣などの湿地に自生しているが、梅雨時の6月から7月、白い小さな五弁の花を咲かせる。花の形が鴨の足に似ている事から、鴨足草と書くようになったとされる。また、「虎耳草」は中国名で、こちらは花ではなく葉の形や模様が虎の耳に見える事からこう書かれるようになったという。①は今から約20年前、梅花藻で有名な滋賀県醒ヶ井を訪れた時の句か。ここは旧中山道沿い。道沿いを流れる川の水は冷たく、清流と呼ぶのにふさわしい透明度を誇る。そんな水の流れを追うように、下を向いて咲く鴨足草の花が印象に残って詠んだ句。②は三重県名張・赤目四十八滝を訪れた時の句。滝に入る少し前、滝の下流に橋があり、そこに鴨足草の花が群生していた。渓流の流れは速く、勢い良い水の音が絶えず聞こえる。その音をあたかも聞いているように、鴨足草は花を咲かせる。その光景が印象に残り詠んだ句。
他に何度か鴨足草を取り上げた句があるが、決まって浄い水の流れとセットで詠んでいる。恐らく、20年前に初めてこの花に注目したのが、水の綺麗な醒ヶ井だったという事が影響しているのだろう。しかし、歳時記には「清流に咲く」とは書いておらず、「湿地に咲く」と書いている。それでも私の中では清流のイメージしかない。この花に限らず、初めて会った人や見たもの、全てにおいて、第一印象というものがいかに大切かがよくわかる。過度に他人に対して印象操作をする訳ではないが、人に会う時のマナーとして、好印象を与えるようにしたいものだ。
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