棄てらるるポルシェの脇に花薺
「雲の峰」2023年6月号青葉集掲載。
薺は俗にぺんぺん草と呼ばれる。春の七草のひとつであり、単純に「薺」だけだと新年の季語になる。薺の花、またはぺんぺん草は春の季語とされる。非常に生命力が旺盛な植物で、空き地、道端、畦道など、どこでも育つのが特徴。荒れ果てた地の事を「ぺんぺん草が生える」と呼ぶほどだ。いつも歩く散歩コースを外れた一角に空き地があり、廃車が何台か捨ててある。その中にスポーツカーらしきもの。よく見ればポルシェのようだ。走っている姿は実にかっこいいが、廃車になってしまえば、他の車と同じように哀れに見える。そんなポルシェの足元には薺の花。捨てられたものと、これから育つもの。明と暗がはっきり分かれているような感覚を覚えて詠んだ句。
田舎の田畑などで、廃車をそのまま放置したり、物置として再利用したりという光景をよく目にする。幼いころ、幼稚園へ通う道すがら、軽自動車が放置してある場所があった。40数年経っても、その廃車はそのまま放置されている。果たして捨てられた車は、持ち主と共に生を全うしたのか。そんな事を感じる事がある。車だけではなく、道具それぞれに同じことが言える。亡父は安いシェーバーを短期間で使いつぶし、また安いシェーバーを買うという事を繰り返した。私は決して物持ちがいい方ではないが、性能が少しいい、少々高めのシェーバーを10年以上使った。どちらが正しい使い方かは別として、部品耐用年数が7年余り。昔に比べて、同じものを長年使うという感覚は、だいぶ失われているのかもしれない。せめて今使っている道具は大切にせねば。
↓コチラも併せてご覧ください♪↓
俳句を楽しみませんか?