在りし日の椿のまゝに落ちにけり
「方円」2004年5月号雑詠掲載。
春の季語・椿と冬の季語・山茶花はよく似ている。最も知られている見分け方はその散り方。山茶花が花びらをバラバラに散らせるのに対して、椿は花ごと落ちる。これを「落椿」と表現して、椿の傍題として、歳時記に掲載している。今回紹介する句は、30代前半に詠んだ句。椿の花が落ちている。まだ落ちたばかりなのか、ついさっきまで咲いていたように、形も崩れず、まさに花のまま落ちたという表現が当てはまる、綺麗な落椿。昔の姿をそのままに落ちたその姿に感銘を受けて詠んだ句。
椿の花が落ちる光景は、最近でも詠んでいる。しかし、椿そのものにスポットを当てるというより、そこに見える全体の風景の中に落椿がある。そんな表現をしている。この句を見ると、若い頃は本当に「見たまま、感じたまま」を詠んでいたという事がよくわかる。これ以上素直に椿を詠んだ句は、過去の句を引っ張り出しても、なかなか見つからない。やはり、物事をまっすぐ見る、素直な心というものを持つ事が大切なのだと、年を重ねるに従って思うようになった。句作では、なるべく余計な事を考えすぎないようにしたい。
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