春寒し五鈷杵を握る大師像

 

「方円」2022年4月号特別作品「穏やかなれ」15句のうちの1句。

「五鈷杵(ごこしょ)」とは密教で用いられる法具のひとつ。煩悩を滅する意味合いがあり、両端には5本に分かれた突起がある。かつては護身用として、人を殺傷するのに用いられていたため、突起は外側に開いていたが、やがて自らの煩悩を滅ぼすための道具へと変化し、突起は内向きになった。日本中にある弘法大師像は、だいたいこの五鈷杵を握っている。高校時代の宗教の授業中、先生から「弘法さんは修行中眠くなったらこれで自分の太ももを突き刺していた」などと教わった。2022年2月、中将姫ゆかりの奈良・當麻寺を訪れる。ここは浄土宗・真言宗二宗のお寺で、弘法大師像もある。この大師像を見て、先に述べた宗教の時間の「五鈷杵を太ももに刺す」のくだりを思い出した。その自らを律する姿が、まだ寒さ厳しい2月の空に投影されているように見えて詠んだ句。

よく勘違いされがちなのは、「煩悩を滅ぼす」ことが、必ずしも「我が身を痛めつける」とイコールではないという事だと思っている。昔流行った所謂「スポ根もの」などは、ただただハードな練習を課し、それに耐え抜く事だけが求められているような表現をよく見る。そうすると、「この人に怒られないように振舞う」という自己防衛本能が生まれる。そうなると逆効果だ。己を律する事は確かに必要だが、「出来なければペナルティ」というのは少し違う気がする。それよりも、自分に足りていない所を冷静に分析して、解決するための己の律し方。これが出来るのが理想だが、なかなかそうはいかないのが現実でもある。

 

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