飼ひ犬の墓標にも土初氷

 

「方円」2008年3月号雑詠掲載。

「初氷」とはこの冬初めて張る氷の事で、新年初めて見る氷という意味ではない。我が家は元日近所の神社へ初詣に行き、その後両親は先に帰宅して、私だけ神社の周りを散歩して帰るのがいつものルーティーンだった。小学生の時に初めて飼い始めて、たった2年で亡くなってしまった犬の墓が、神社の近くの共同墓地にある。今のようにペット専門の葬儀社がなかったので、そのまま土に埋めて、木材の切れ端で粗末な墓標を立てた墓だったが、20年以上の年月を経て、その墓標すらわからなくなっていた。周りにはほかのペットの墓標が、土を被った状態で残っていたが、誰かがお参りしている様子もなかった。水たまりが凍って、ここだけは実に侘しい空間になっていたのが印象に残って詠んだ句。

私は子どもの頃、犬が苦手だった。両親の話によると、バナナを食べながら歩いていたところ、前から来た大きな犬が飛びついてきて、バナナを奪って逃げたのだという。それ以来のトラウマで、親戚が飼っていたチワワを見ても怯える子だった。これではいけないと、ご近所から子犬を譲り受けて飼い始め、トラウマは解消した。実は雷も苦手で、これも両親曰く、幼少のトラウマだという。こちらは未だに苦手なまま。ただ、以前のように遠雷が聞こえただけで身構えて隠れようとするという事はなくなった。犬はトラウマが解消し、雷はトラウマが残った。少し話がそれるが、幼少の頃、あれだけ苦手だった豆腐が、今では平気になった。年月を経て解消する苦手もあれば、積極的に取り入れる事によって解消する苦手もある。はたまた解消しないものも。今まで避けていた苦手があれば、積極的にそこに飛び込むのも、一つの方法かもしれない。

 

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