水仙花道行く人に背を向けて
「方円」2012年2月号雑詠掲載。
水仙は冬の季語。淡路島の黒岩水仙侠などが有名で、海岸に自生する。切り花用に栽培もされており、庭先や花壇などでこの時期よく見かける。全ての花が道行く人に花を向けている訳ではなく、中にはそっぽを向いて咲いている花もある。花にも個性があるのか。「私は誰にも見られたくない」と、水仙が拒否反応を示しているようにも見えなくもない。そんな姿も可憐に見えて詠んだ句。
中学1年の時、役所広司主演のNHK大型時代劇「宮本武蔵」が放映されていた。家族で夢中になって見ていたが、翌年の全日本吹奏楽コンクールの課題曲に、このテーマ曲と一部劇中曲をまとめた「Overture FIVE RINGS」が採用された事に驚いた思い出がある。そんなドラマの中で、印象的なシーンがあった。巌流島決戦を間近に控え、ナーバスになっていた佐々木小次郎が、理由は忘れてしまったが、飼っていた鷹を斬ってしまう。それを家族に見られた小次郎は、半ば激昂しながら「お願いでござる。一人にして下され!」と言い放って、自室に籠ってしまうという場面があった。どんなに強い人も、大舞台の前には誰にも会いたくなくなるのか。そんな風に当時は思っていた。そういう場面のあるなしに関わらず、今日は誰とも会いたくないという日が、人間必ずあるものだ。それが数年以上毎年続くのは問題だが、気持ちを切り替えて、そうした時間をなるべく短くして、人とのふれあいを大切にしたい。独り暮らしになって、特にそう思うようになった。
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