金木犀近づくごとに向ひ風

 

「方円」2010年12月号雑詠掲載。

金木犀は言わずと知れた秋の花。橙色の花を咲かせるのが金木犀で、白い花を咲かせるものを銀木犀という。花が咲くのは仲秋の頃。まことにいい香りがする。そんな金木犀を、外出中に見つける。花を先に見つける事もあれば、香りに気付いて振り向けば花がある場合もある。そんな花の香りをアピールするように、近づけばこちら向きの風が吹く。実際そんな事はないのかもしれないが、自分の頭の中に「金木犀の香り」がインプットされたが故の錯覚に陥っているのかもしれない。金木犀があれば、近づいて香りを愛でたい。そんな人間の欲求のようなものを詠んだ句。

「今年の京都は金木犀が咲くのが遅かった」という見出しが、新聞に載っていた。記事の内容は読んでいないが、確かにそう思う。我が家にも金木犀の木があり、昨年は9月半ばにはもう咲いていたが、今年は10月14日に初めて咲いているのを見た。ご近所の金木犀も、揃って開花が遅い。そして、私だけかもしれないが、花は見かけるが、あの独特の香りが漂ってこない。鼻が悪いせいかもしれないが、以前は香りを先に見つけるという事が多かった気がする。それが、いつ咲くのかいつ咲くのかと、そればかり気にして木を見続けたせいか、花が咲いたら咲いたという事実に喜び、香りが後付けになってしまったという事かも知れない。花を見て、香りを確かめに行くより、どこからか香りがするというシチュエーションの方が、香りを愛でやすいのかもしれない。

 

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