角に入り曲がり切るまで丁子の香
「方円」2009年5月号雑詠掲載。
丁子と言えば香辛料や生薬として使われる丁子を思い浮かべるが、俳句の世界では丁子は沈丁花の傍題として扱われる。そもそも沈丁花という和名の由来は、沈香と丁子の香りを併せ持つからという説と、香りは沈香で花の形が丁子だからという説がある。そうした由来から丁子を沈丁花として扱っている。和名の由来の通り、誠にいい香りのする花。この花の香りが漂って来ると春を感じる。よく庭木として栽培されるため、ちょっとした路地に入ると香りがする事がある。その香りに誘われて、路地に入り、角を曲がる。路地から出るまでずっとその香り。春を感じながら歩く自分の姿と、沈丁花の香りを客観的に見て詠んだ句。
これが14年前の句。最近とある美術館へ行く道すがら、駅前の小さな路地に沈丁花を見つけて、思わず香りを求めてその路地に入った事があり、それを句にした。その時は、今回紹介した句の事はすっかり忘れており、過去の作品を見て思い出した。年月は経っても、同じようなシチュエーションに出くわし、同じように感動し、同じように句を詠む。何年経っても、人の感性や思考はさほど変わらないという事か。しかし自分としては、この感性を大切にしていきたい。
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