花開く戊辰の志士を眠らせて

 

「方円」2021年5月号円象集掲載。

今日は春分の日。所用で外出したら、桜がぽつぽつと咲いていた。俳句の世界で「花」とは桜の事。そこで、今日は「花」を使った句を紹介する。2018年に父を亡くしてから、遺品のパソコンの中に「街道歩行記録」というエクセルファイルを見つけた。他にも歩いた散策コースなどがテキストファイルに記録してあった。こうした記録を遡り、かつて父が歩いた場所を辿ってみようと思いついた。その一環で、鳥羽街道を歩いてみた。鳥羽街道は東寺の近く、羅城門からスタートして、鳥羽を通って伏見区・淀に至る旧街道。かつては淀からさらに大阪まで街道が続いており、京街道、大阪街道とも呼ばれていた。鳥羽と言えば、戊辰戦争の鳥羽伏見の戦いを思い起こす方も多いだろう。途中その戦地となった道標も通る。春も半ばの晴れた日、街道沿いにはそろそろ桜が咲き始めている。実際に鳥羽伏見の戦いがあったのは旧暦1月初旬の話。花の季節にはもう終わっており、力尽きた戦士の魂が、桜の下で眠っていた事だろう。そんな名もなき戦士の事を想いながら詠んだ句。

官軍も旧幕府軍も、己が信じる道のために命を懸けた。それだけははっきりしている。現代人の仕事に置き換えてもいいだろう。己の生活のため、己の役割を真剣に全うする。それが人間というものだ。今日はWBC準決勝対メキシコ戦。朝からテレビに釘付けになり、一喜一憂した方もいるだろう。侍ジャパンは勝利のために、どれだけ不利でも決して諦めず、己を鼓舞し続けた。今置かれている状況を見て、そこで後ろ向きになるのではなく、熱意をもって創意工夫し、最善を尽くす。この最も基本的かつ重要なところが、今の自分には最も欠けていると、今日の劇的サヨナラ勝ちを目の当たりにして感じた。

 

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