やや低きフェリーの汽笛春寒し

 

「方円」2013年4月号清象集掲載。

「春寒し」とは立春を過ぎてからの寒さの事。「余寒」という季語もあるが、余寒は寒明け後の寒さ。「春寒し」の方が春になった気分が強い。尚、手紙の書き出しに見られる「春寒料峭」の「料峭」とは春風が冷たく感じられる事。同じような季語でも感じ方、捉え方が違うので注意したい。さて、この句の場面。10年前の事で、あまり覚えてはいないが、同じ月に掲載された句を見る限り、淡路島と思われる。2月、まだまだ肌寒い日々が続く中、遠くにフェリーが見える。フェリーの汽笛は、蒸気機関車と違って低く唸るような音がする。それが余計に寒さを感じさせる要因にもなる。この季節ならではの寒さと、それを演出する船の情景を詠んだ句。

私が船に乗って遠出したのは3年ほど前。小豆島に出掛けたのが最後。大きなフェリーとなれば、高校の修学旅行以来。独り暮らしになってからは、泊りがけの遠出をした事がない。旅行と言えば大体近場。毎朝仏さんにお供えをしなければという思いと、防犯上の心配から、一晩家を空けたくないというのがその理由。そんな事を言い続けて、実は飛行機にも乗った事がない。色々な所へ出向いて見識を深めるというのは、自分にとってマイナスではないはず。でも、最近そういうものから遠ざかっている。たまには時間を見つけて、思いっきり羽を伸ばす事が、精神衛生上必要かもしれない。

 

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