元句:梅一輪残りの家も明け渡す

校正後:家を明け渡す咲き初む梅の木も

 

「方円」2003年4月号雑詠(現・明象集)掲載。

今日は久しぶりに校正実例。この句は20年前の作で、正直どんな光景を詠んだのか覚えていない。廃村に咲く梅の花なのか、区画整理なのか、それともダムに沈む村なのか。集落の中でただ1軒残った家が、梅の咲く季節にとうとう明け渡され、誰も居なくなった集落に、ただ梅の花が咲いている。こんな風景を詠みたかったのだろうと推測する。自分で詠んだ句でありながら、情景が全く浮かばないというのは、まだまだ未熟という事だろう。当時の方円主宰、中戸川朝人先生の校正で、この句は生まれ変わった。

元句は「残りの家」という言葉を使って、集落全体が無人になった事を表現しようとしているが、自分で後で読み返してみると分かりにくい。自分が分かりにくいなら、他の人が見ると尚更だろう。主宰の校正では、家もその庭に咲く梅の木も、残らず明け渡されたという光景に変えている。その方がシンプルで分かりやすい。尚且つ、人のいなくなった家に梅だけが咲くという光景が、よりクローズアップされている。やはり言葉は慎重に選ぶもの。俳句のみならず、人との会話や報告でも、正確に伝わる言葉、言い方というものに気を付けたいものだ。

 

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