寒林のなほも直立不動かな
「方円」2016年3月号円象集掲載。
「寒林」はいかにもこの時期らしい季語。合本現代俳句歳時記によると、冬木立や枯木立、裸木の山などが「寒に入った」状態として詠むのがよいとされている。冬木立などより寒林の方が強く、厳しさがあると言われている。そんな寒さ厳しい中でも、身じろぎもせず直立不動のままの裸木、枯れ木たち。自分が根を張っているこの地で生き続けるんだという強い決意を読み取って詠んだ句。
今日は1月17日。防災とボランティアの日。言わずと知れた阪神忌。阪神淡路大震災があった日だ。この句そのものは、その時の様子を詠んだものではない。しかし、どんな大災害があっても、木はその場に根付き続ける。そして何事もなかったかのように葉を茂らせ、花を咲かせ、実を実らせる。そして冬になると葉を落とし、裸木になってなおもそこに立ち続ける。いわば歴史の生き証人的存在だ。人間の存在など小さいのかもしれない。人は忘れる生き物。あの大震災の記憶も薄れつつある。そして徐々に伝える人が少なくなっている。そこに立つ木のように、何があってもその場で全てを見聞きし、体現するという、強い意志が人には必要な時がある。どうかこの日を忘れないで。
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