枯園に風訪ふ音の乾きけり

 

「方円」2020年1月号円象集掲載。

「枯園」は冬になり、草木も枯れ果てた庭や公園を指す。「冬庭」という傍題もあるが、枯れ果てた様をよく表す季語は、やはり枯園だろう。どこの庭を指しているかは忘れてしまったが、恐らく荒涼とした枯野だったのではないかと思う。そこに風が吹き抜ける。乾いた風の乾いた音。その庭に留まることなく、乾いた音を立てて通り過ぎてゆく。いかにも冬らしい光景。そこには確かに草木が生え、生命が宿っていたが、今はすっかり影を潜めている。そんな寂しげな光景を詠んだ句。

歳時記では、この枯園について、こんな説明がされている。

「ものさびて森閑とした景は他の季節とはちがった落ち着きや明るさを見せる。」

冬の季語には、「枯れる」を題材にしたものが多い。どうしても寂しさ、儚さというイメージが前面に押し出されがちだが、そういう見方があったのかと、今更ながら感心した。私たちは、生命感あふれて、今元気に過ごしている人や生物に目を向けがちだが、日本人には枯れて何もない情景を、一つの絵として愛でるという、独特の美意識がある。考え方次第で、今見えている情景がネガティブにもポジティブにもなるという事を頭に置いて、どんな時でもいい方向に考えねばと思う。

 

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