石垣は目線の高さ石蕗咲けり
「方円」2012年1月号雑詠(現・明象集)掲載。
石蕗とはツワブキの事。俳句ではこれで「つわ」と読ませる。ツワブキは海岸や海辺の山に自生するキク科の常緑多年草。10月から12月にかけて、鮮やかな黄色の花を咲かせる。「石蕗」だけでは花の事を指さないので、「石蕗の花」で冬の季語とされる。この句を詠んだ当時の私はこの事を知らなかったが、例句を見ると「石蕗咲く」という使い方をしている句もあるので、間違った使い方はしていなかったようだ。
さて、句の情景。この句を詠んださらに数年前、句会の先輩方と和歌山へ吟行に出掛けた。その時、和歌浦の番所(ばんどこ)庭園で一面に咲いているツワブキの花を見て、この季題が好きになった。それからこの花を見るたびに注目するようになった。この句もそんな中で生まれた句。目線の高さの石垣なので、お城ではなく一般の家屋敷。その隙間から生えているツワブキが、やはり目線の高さに黄色い花を咲かせている。まるで「私を見て」と言わんばかりに、鮮やかに咲いている。そんな風景を詠んだ句。
今年11月の月例句会。「石蕗の花」を題材にした句を提出したところ、普段農作業をされている参加者が、こんな事を言っていた。
「あの花放っといたらすぐ増えるし嫌い。見かけたら全部抜くようにしてるわ」
確かに、我が家のほったらかしの庭でも、毎年咲いている。強い花のようだ。見た目は綺麗なのだが、畑に咲いていたら、確かに邪魔かもしれない。花を愛でるという行為と生活とは、なかなか相容れないものがあるようだ。
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