凛とせし遺影に今年米供ふ

 

「方円」2022年1月号円象集掲載。

「今年米」とはいわゆる新米の事。そろそろスーパーなどに新米が並ぶ季節になった。何もない休みの日はよく散歩に出かけるが、農家の前などに、今刈って精米したばかりの新米が売られたりしている。そんな季節。1年前の今頃は、どうしても亡母の句が多くなってしまうが、今回紹介する句も母の句。最期は自宅で過ごしたので、訪問看護を利用。そこからの請求書に、こんなメッセージが貼ってあった。

「お母様の凛とした生き様は私達に勇気や強さを教えて頂いたように思います。ありがとうございました」

ケアマネさんや訪問看護さんにそこまで言わせてしまう母はやはり強く生きたのだろう。このメッセージを見た後遺影を見たら、確かに凛とした姿に見えた。そんな遺影に、買ったばかりの新米を炊いて供えた。向こうではゆっくり過ごして欲しい。そんな思いで供える。そんな情景と心境を詠んだ句。

ここ最近、自分の欠点、未熟さ、自信のなさばかりが際立ってしまっている。この歳になるまで、常識もわきまえず、要領も悪く、ただ日常に流されて生きているだけ。それが周りにどんな影響を及ぼしているのか、全く考えもせずに生きて来たのではないか。そんな風に指摘されても仕方がない。一方の亡母は、亡くなる1年前に後の事を事細かく書いて残しておくなど、本当にこの親からこの息子が生まれたのかというぐらいしっかりしていた。「普通」になるためには数十倍の努力が必要かもしれないが、せめて堂々と生き続ける事だけは心掛けたい。

 

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