終電を見送る後のちちろ虫
「方円」2015年12月号清象集掲載。
「ちちろ虫」とはコオロギの事。この時期、夕方になるとどこからともなく聞こえて来る声の主のひとつだ。この句を詠んだのは日曜日。吹奏楽団の練習を終えて、帰り道にあるコンビニの駐車場に車を停め、車内のワンセグでN響アワーなど見ながらおにぎりとカレーパンをほおばる。それが日課になっていた。このコンビニはJRの線路沿いにあり、単線の線路を207系が過ぎ去って行くのが駐車場から見える。正確に言えば「終電」ではないのだが、夜遅くなっているのは確かな事。電車が轟音とともに去った後はまた静かになり、虫の声が響くばかり。日曜が終わってしまった。そんな事を考えながら詠んだ句。
この頃、吹奏楽団は週1回の練習で、昼の1時から夜の8時過ぎまでみっちり練習。施設自体は10時まで使えるので、合奏が終わってもギリギリまで個人練習などをしていた。この練習環境を大きく変えざるを得なかったのが2020年。例の感染症が猛威を振るいだし、ありとあらゆるイベントが中止に追い込まれた、あの時だった。感覚を取って個人練習から再開したものの手探り状態。当然夜遅くまでは出来ない。そんな状態が続き、漸く集まって合奏が出来るまでになったが、練習終了時間はそのまま繰り上げられた。夏のコンクールシーズンなどは日暮れが遅いので、帰る頃はまだ薄明るい状態。秋になって日暮れが遅くはなったが、それでも以前は家で見られなかったNHKの大河ドラマや日曜美術館を見ながら晩ご飯。それがすっかり定着した。こういう大きな出来事でもなければ、日常的な習慣はなかなか変わる事はないのだが、病気が生活を変えた。そんな人は多いのではないだろうか。
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