命とは小さきものなり盗人萩

「小さき」は「ちさき」と読む。

盗人萩とは、マメ科の植物で、秋の季語に当たる。萩に似た花を咲かせるが、萩とは異なる。種子を覆う果実は鉤のような毛で覆われており、それが人の衣服や動物の毛にくっつく。いわゆる「ひっつき虫」と呼ばれ、その名の方が一般的に知られている。花はまことに色鮮やかで、一つ一つが小さい。日本中どこでも見られる植物で、普段私たちが吹奏楽団の練習場として借りている住民センターの駐車場にもたくさん生えている。今日練習に出向いたら、この花が駐車場の土手に点々と咲いていた。こんなに小さい命が可憐に咲いている。暦を見ると、今日は9月11日。米国同時多発テロが発生した日だと気付いた。そう考えると、生物の命というものは何と小さく、簡単に失われるものなのかと感じる。そんな小さい命への供養の意味も込めて詠んだ句。

この4年で両親と相次いで死別し、それから命を詠んだ句を詠む機会が増えた。意図的にそうしているのではなく、考えるうちにそういうキーワードが思い浮かぶ頻度が増えたと言うべきか。特に父親は、自宅で倒れて病院へ担ぎ込まれてから、僅か10日余りで旅立ってしまった。命というものは、そんなに簡単に失われるものなのか。そんな事を考えてしまう。儚いものだからこそ、大切にしなければならない。しかし人の手によって失われる命もある。そうした無念の存在を忘れることなく、私たちはその人たちの分まで命を全うせねばならない。当たり前の事だが、今日は特にそんな思いを抱いた。

 

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コダマヒデキ~音楽と俳句の部屋~