底紅のきのふより濃き紅を差す
「方円」2021年11月号円象集掲載。
「底紅」とは木槿の別称。木槿はアオイ科フヨウ属の樹木で、芙蓉と同じ時期に咲く事から秋の季語とされている。また、五弁の花びらの奥、めしべに近いところが赤く染まるため、底紅と呼ばれている。我が家の手入れの行き届いていない玄関先にも、毎年8月に白い花を咲かせる。底に紅を差した状態で。昨日花開いた底紅の紅が、明くる日になると心なしか濃くなっているように見える。空模様によるのか、光の加減かわからないが、何となくそう見える。それが「昨日の私より今日の私」と主張しているように見えて、いとおしく感じる。一生懸命生きる姿を投影しているように見えて詠んだ句。
「お前は成長がない」と、面と向かって言われてしまった。すべからく私の責任。一日何も創意工夫をするわけでもなく、流れ作業のように過ごしていれば、そう言われるのは当然だろう。一方、趣味の世界では、トロンボーンをもっとうまく吹きたい。もっと綺麗な音が出したい。もっと俳句を上達させたいと、自分の好きな事に関して向上心が未だにある。この差は何だろう。人間、本来はいかなる事に関しても探求心と向上心を持って然るべきで、そこに自分の好みは影響してこないはず。なのに一日のんべんだらりと過ごしてしまう。「昨日の自分より今日の自分」と言い聞かせて、もっと積極的にならねば。木槿の鮮やかな赤を見て、反省しきりである。
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