野葡萄に山頂の風染まりけり

 

「方円」2009年11月号雑詠(現・明象集)掲載。

この句を詠んだ当時は30代後半。休みの日には絶景を求めて山に登ったりしていた。と言っても本格的な登山ではなく、ハイキングの延長なのだが。9月はまだ暑い盛りだが、周辺の空気は徐々に秋の雰囲気に変わってゆく。緑一辺倒だった山や森も、木の実の色などで色づいてくる。この句がどこの山を指しているのかは忘れてしまったが、野葡萄の鮮やかな紫が山頂に目立つ。それに伴って、山の空気も鮮やかな秋色に染まるような、そんな雰囲気を「山頂の風」が「染まる」と表現した。変わりゆく季節を感じながら詠んだ句。

今の今まで、ずっとそういう景色だと思っていた。しかし、ごく最近、俳句を始めてから20年余り間違った認識をしていたことが分かった。ずっと野葡萄だと思っていた実が、実は山牛蒡の実だったという事。過去数回詠んで「方円」にも掲載されてしまっているが、間違った内容を書いていたという事になる。山牛蒡は花が夏の季語。実は私の使っている歳時記には載っていない。他にも鵙と思っていた鳴き声がヒヨドリだったり、色々と間違って覚えてしまっている。自然を詠んでいるつもりで20年過ごしてきたが、その割には自然に関する知識が欠けている。お恥ずかしい限りだ。自然は奥深い。だから自らの目で見た自然の風景を正確に読み取り、それをもとに句作に励まなければならない。一つ勉強になった。

 

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