けふ我鬼忌蜘蛛は命を助けらる
「方円」2021年9月号円象集掲載。
二日過ぎてしまったが、7月24日は作家・芥川龍之介の命日。「河童忌」という呼び方が一般的に知られている。実は俳人としても活躍していて、「我鬼」という俳号を使った事から、「我鬼忌」と呼ばれている。「がき」と打てば「餓鬼」と変換される事が多いので、注意したい。そんな7月24日。自宅にハエトリグモが住み着いてしまった。あまり同居したくない居候なのだが、蚊などを食べてくれる益虫という事もあり、無碍に叩き潰すのは宜しくない。私にできる事と言えば、窓を開けて逃がす事。これで蜘蛛は助けられた。芥川龍之介が描いた「蜘蛛の糸」の世界。それになぞらえている訳ではないが、命をひとつ助けたという事実を素直に詠んだ句。
お気づきの方もいらっしゃるかもしれないが、「我鬼忌」と「蜘蛛」は両方とも夏の季語。季語が二つになってしまったが、この場合は我鬼忌を季語として扱っていると思って頂きたい。
芥川龍之介は、皆さんご存じの通り「将来に対するぼんやりとした不安」という言葉を遺して自殺した。人間、誰しも悩む事がある。私自身も、将来このまま過ごしていいのだろうかと考える事がある。だからと言って、この世が嫌になるという発想はないが、家に帰ってたった一人で過ごす生活が長くなってくると、ふと不安に感じる事は確かにある。ただ自分には会社というコミュニティ、吹奏楽団というコミュニティ、さらに俳句結社というコミュニティと、人とかかわっている組織が3つもあり、いつでもどこでもたった一人という事はないので、その点恵まれているのかなとも思う。少なくとも、今現状のコミュニティ。その中での人との交わりを大切にして、どうしようもない不安を払拭していきたい。
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