原発に続く鉄塔夏薊
「方円」2014年8月号清象集掲載。
薊の花は通常春に咲くが、初夏から夏にかけて咲き残っているものもある。これを夏薊と呼び、夏の季語としている。私の好きな季題の一つでもある。赤くとげとげしいが可憐な花。それが斜面や土手に咲いている姿は壮観だ。この句を詠んだ当時、ふらっと福井まで出掛けた。主に敦賀から福井市内を訪れたと思うが、ルートははっきりと記憶していない。ただ、海沿いの景色の良い道に美浜原発が見えた事は覚えている。そこに咲く夏薊。そして原発から伸びる高圧線。鉄塔。無機質な電気設備をバックに、生気みなぎる赤い花が咲く。この対比に感銘を受けて詠んだ句。本来なら「原発より続く鉄塔」とするところだが、遠くに見える感じを出したかったので、あえて原発をゴール地点にした。
誤解しないで頂きたいが、これは別に原発の是非を説くものではない。あくまでその無機質なフォルムを、景色として詠んでいるだけの事。他意は全くない。仮に時事的な内容を句に含めるのは、以前も述べたかもしれないが、相当な覚悟がいると思っている。17文字という短い言葉の中に、どれだけの訴えを詰め込むのか。それをしっかり考えなければならない。なので、私ごときが詠む句は、せいぜいその景色をよしとして詠んだもの。これだけの話と思って頂きたい。
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