絶景に背を向け蜥蜴逃げにけり
「方円」2015年8月号清象集掲載。
場所は全く覚えていないが、恐らくハイキングでどこかの山に登った際の一コマ。本格的な山ではなく、200~300m程度の低山や山城によく登る。吟行を兼ねてという事もあるが、パソコンや携帯の壁紙として最適な写真を撮るために登っていた時期もあった。なので、頂上が開放的で、景色が開けたら嬉しいし、達成感がある。山頂からの絶景に見入っていると、ふと横に動くものが。見ると蜥蜴。目の前の絶景に目をやる事もなく、傍に自分に危険を及ぼすかもしれない人間が立っている。ここから一刻も早く逃げねばと、脊髄反射的に藪の中に駆けこんでいく。そんな姿を詠んだ句。
この光景、まさに絶景には目もくれずといった状況だった。目というものを持った生きとし生けるものは、生存のため目でものを見るという行動を取る。獲物を見つけるため。捕食者から逃げるためと様々だ。カラスは肉を探し当てるための特殊な目を持っている。草食動物は敵から逃げるため、広範囲の視野を持つなど、色々な話を聞いたことがある。いずれも生きるために必要不可欠かつ最低限の機能と言えよう。そうして見てみると、生きるために心を安らかにしてくれるという視点を持つのは、人間の特権なのかもしれない。この感覚を大切にしたい。
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