げんげ田や鉄路の上り下りにも

 

「方円」2021年7月号円象集掲載。

毎年4月から5月にかけて、蓮華の花が畑を埋め尽くす光景を目にする。これは前の年に農家が植えたいわゆる緑肥で、根の根瘤と呼ばれる瘤に根粒菌を住まわせ、空気中の窒素を養分に変えて貰い、土を肥やす事を目的にしている。好きな光景で、昔「げんげ田に風追ふ色の過ぎにけり」という句を詠み、好評を博したことがある。かつて通勤に使っていたJR学研都市線の沿線にもそんな光景が広がる。それが線路の右側にも左側にも見られ、実に壮観。上り電車からも下り電車からもこの風景が見られる事だろう。最近は電車に乗らなくなったが、そんな車窓の風景を想像して詠んだ句。

このところ、あまり遠出をしなくなったせいか、じっくりと散歩する機会が減ったせいか、こうした一面蓮華畑という光景を、前ほど見なくなった気がする。いつも買い物に出かけるスーパーの周りの畑も、いつもに比べたら心なしか蓮華が少ない気がする。私の思い違いならいいのだが、色んな人のブログなどを見ていると、本当に蓮華畑は減りつつあるようだ。どうも開花を待っていたら田植えが遅れるという理由で、緑肥よりも化学肥料を選択する農家が増えているのだという。頷ける理由だ。しかし、どことなく寂しさが残る。自然と生活、どちらを選ぶかと言われれば当然後者だが、春の風物詩が減るのも寂しい。バランスの取れた田園風景というものが、いかに難しいかという事だろう。

 

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