春灯や五人家族の時代あり
「方円」2021年5月号円象集掲載。
春灯、文字通り春の灯火。歳時記では通常「春燈」と書くことが多い。春の灯火を評して「華やぎさざめく灯火」、「朧夜には一種の艶な感じを持っている」と表現する人もいる。季語としては比較的新しいが、いかにも春らしい季語だ。この季語が、ネット句会の兼題として出されたが、あまり私としてはピンと来なかった。イメージだけで言えば、灯りを取り囲んで一家団欒といったところか。そこで今回の句が出来た。実際私は、幼少の折、今の家に越してきた頃、両親と祖父母の5人家族だった。賑やかだった時代を懐かしむ思いで詠んだ句。
小学2年で祖父が亡くなり、大学1回生で祖母が亡くなり、50手前で父が亡くなる。この句はその頃に詠んだもので、事情を知っている句会代表から「心に染みる」と評された。そして母が亡くなり、5人家族はとうとう一人になってしまった。職場や句会、吹奏楽と、外では人と接する事が多く、それなりに賑やかにやっているが、帰宅後ご飯を食べてほっと一息つくと、何とも言えない寂しさを感じる事がある。気楽な部分も確かにあるのだが、家に帰ると門灯だけが光っていて、鍵を開けると真っ暗。当たり前の事だが、何とも言えない気分になる事がある。余計なお世話かもしれないが、一緒に暮らして、帰りを待ってくれる人がいるという事が、実はとても恵まれた事なのだという事を知って貰いたい。
↓コチラも併せてご覧ください♪↓