陵の円より方へ鴨泳ぐ
「方円」2011年2月号雑詠(現・明象集)掲載。堺・仁徳天皇陵を訪れた時の一コマ。
仁徳天皇陵。現在は世界遺産に登録されているこの古墳は、百舌鳥古墳群のうちのひとつで、言わずと知れた日本最大の古墳にして、世界最大の墳墓とされている。上空から撮影された写真はよく見るが、実際に行ってみると当然あのようには見えない。しかし、規模の大きさは現地で見るとよくわかる。周りに巡らされている堀も大きく、それがまた古墳の大きさを助長しているように見える。そんな濠を鴨が泳いでいる。堀でも池でも、この時期水のある所には鴨がいる。仁徳稜は前方後円墳。鴨は基本的に行きたい方向へ泳ぐものだが、たまたま目に付いた鴨の一羽が、「後円」の部分から「前方」の部分へと泳いでいる。ただそれだけの風景なのだが、前にある古墳の風景と相まって、この鴨も歴史の一部になっているような気がして詠んだ句。
葬儀や相続などの後始末がひと段落ついて、母の机を整理していると、両親が並んで立っている写真が見つかった。撮影日だけ鉛筆書きで書いてあったが、場所は未記入。周りの風景から想像するに、どうも仁徳陵のようだ。そういえば、私も昔単独で行ったことがあるはずだ。俳句も詠んでいた。そこで思い出したのが今回の句。古墳そのものというより、鴨など周りの自然や生き物に注目して詠んだ記憶がある。今訪れたら、また見える景色も変わるかもしれない。落ち着いたら再訪したいものだ。
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