三島忌や世を憂ひたる妣の歌

 

本日11月25日は作家・三島由紀夫の命日。1970年、三島をはじめとする盾の会メンバーが、自衛隊市谷駐屯地に乗り込みクーデターを呼び掛けた後割腹自殺をした、いわゆる「三島事件」の起こった日。彼の作品の名を取って、「憂国忌」ともいわれる。作家という、言葉と文字で生計を立てる人の忌日という事で、こんな日ぐらいは私も活字に親しもうと、家にある活字を開いてみたら、9月に亡くなった母がかつて所属していた短歌会の会誌があったので、読んでみた。そこにこんな歌があった。

 

遠き地の戦の今を映し出す劇画の如きそを傍観す

 

テレビの前で、とても現実に起きているとは思えない紛争の光景をよく目にすることがある。それを「劇画の如き」と詠んでいた。母なりに世の中を憂いていたのかもしれない。そんな風に感じて、私もこの歌に対して追悼のつもりで一句詠んでみたのがこの句。尚、「妣」は「はは」と読み、亡母の事を差す。

こうして私の拙句と母の短歌を並べてみると、改めて短歌と俳句は違うのだと感じる。俳句はご承知の通り17文字しかなく、的確に言いたいことを表すために言葉を極限まで削ぎ落す。短歌は31文字。我々が俳句の感覚で詠もうとすると、どうしても冗長で散漫になってしまう。結局何が言いたいのかという事をはっきりと第三者に理解してもらうためには、言葉選びという事が何よりも大事になって来る。私も一言で説得力のある力強い言葉というものを探し求めていきたい。

 

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コダマヒデキ~音楽と俳句の部屋~