雨音に隠るる如く蚯蚓鳴く

 

「蚯蚓鳴く」とは本当にミミズが鳴いている訳ではなく、螻蛄の鳴き声を蚯蚓鳴くと表現したもの。地中からジーという単調な低い声で鳴いている声を、土の中のミミズが鳴いていると思って取り違えた表現が、今でも秋の季語として残っている。日本中連日のように激しい雨が続き、今でも外では雨の音が響いている。耳をすませば、螻蛄の声も聞こえて来る。しかし、雨のトーンと似ているため、なかなか聞き取りづらい。そんな中でも鳴き続けるのは、子孫を残すためなのかどうなのか。自然環境が著しく変わっても、動物の生の営みは変わらない。そんな使命のようなものを感じて詠んだ句。

日本中が悪天候と気候変動、そして病気に振り回され続けている。なかなか生活しづらい世の中になって来た。これだけ異常事態が続くと、だんだん人の感情がおかしくなり、疑心暗鬼に陥り、我が身を守ろうとして人を陥れかねない状況になっている。自分は理性を保っているつもりかもしれないが、反射的に自分の身を守る行動を取る。致し方ない事だろう。ただ、どんな動物にもその後の人生が続く。人には人の人生を終わりにしてしまう権利はない。その事だけは肝に銘じて、この難局を何とか乗り切りたい。雨の音とオケラの鳴き声だけでこれだけ考えてしまう今の世の中が早くいい方向に向かう事を祈る。

 

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コダマヒデキ~音楽と俳句の部屋~