鉦叩道を隔てて歌ひ合ふ

 

「方円」2013年10月号清象集掲載。

一時期に比べて、朝夕の猛烈な暑さが影を潜めた。朝ごみを出しに表に出た時、ふと秋を感じる事がある。夕方も然り。そろそろ虫の声が聞こえるようになった。あまり目立たないが、我が家の近辺でよく耳にするのがカネタタキの声。鳴き声は「チン・チン・チン」と単調だが、よく通る高い金属音がするので、この名が付けられた。各ご家庭の庭先にいるようで、夕方歩いているとあちこちで聞こえる。通りすがりのこちらの家で聞こえたと思ったら、道の向こうのあちらの家でも聞こえて来る。そんな歌い合う風景に秋を感じて詠んだ句。

京都では、毎年恒例の五山送り火が無事開催された。これでご先祖様を無事送り届けて、本格的な秋。しかし、昨年同様規模を縮小して行われ、大文字は文字の頂点と交点のみ。妙法は点だけ。何とも寂しい光景が去年に続いて見られた。そして京都に緊急事態宣言が出されようとしている。去年は秋ごろから徐々にイベントなどが再開されて、漸く元に戻るかと思われた時もあったが、今年の秋は厳しく寂しいものになりそうだ。一人一人が十分に注意して、いつか虫の声を気兼ねなく聞き、完全な形の送り火を気兼ねなく観覧できる世の中になって貰いたい。

 

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