盆用意瓢箪柄の染暖簾

世間はお盆。「盆用意」とは、お盆を迎えるに当たり、墓や仏壇の掃除、仏具を清める、お膳や盆提灯の準備、お墓までの道の草刈りなどの準備をする事を指す。我が家はとりわけ何もしないのだが、ほんの気持ち程度に野菜やお菓子を仏壇に供える。今年は大学時代の友人から差し入れとして頂いたどら焼きを、リビングの父の遺影にお供えした。供え終わって夕食の支度をして、ふと一息つくと、台所に吊ってある暖簾が見えた。普段しげしげと眺める事はないのだが、お酒を入れる大きなひょうたんの絵が描いてある。世間は盆用意が終わり、一息ついてお酒の一杯でも飲むのだろうか。ふとそんな事を思って詠んだ句。

私は京都市内で生まれ、2歳まで枚方の社宅に住み、それから長く現住所に住んでいる。そのため、お盆に帰省という概念がなく、親戚中が集まるというイベントもない。至って静かなお盆を過ごす。本来なら先祖代々をお迎えして、僧侶を招いてその霊を弔い、また帰ってもらうという一連の儀式をするべきところなのだろう。我が家はお供えを飾るだけで何もしないのだが、そこまで欠けることなく行うご家庭は、今は果たしてどれだけいるのだろうかと思ってしまう。人に言わせれば「愛想なしの罰当たり」と言われるかもしれないが、心の中で感謝している。気は心という事でご容赦願いたいものだ。

 

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コダマヒデキ~音楽と俳句の部屋~