夕蝉や数珠屋の並ぶ都路

 

「方円」2016年9月号円象集掲載。

当時私は営業職。奈良で飛び込み営業をやっていた。一度だけ大きな売り上げを上げた事があるが、それ以降は鳴かず飛ばず。そこで研修と称して京都の本社へ送り込まれた。歩いたのは七条堀川から五条通。そこから東に向かって河原町通りを南下して戻るコース。堀川通には東本願寺があり、道の東側には仏具屋、仏壇屋が立ち並ぶ。なかなか話を聞いてくれるお店もなく、ひたすら歩いていたら夕刻近くになった。お寺からは蝉の声が聞こえる。何も結果が出ず、寂しい気持ちになりながら詠んだ句。

あの当時から不思議だった。何故これだけの同業者が軒を連ねて、お互い干渉せずに残っているのだろうと。家電製品などと違って、競争したり価格戦に入ったりという事は考えられない。恐らくそれぞれのお店ごとに、あの店はあのお宅という風に固定客がいるのだろう。それであれだけ立ち並んでも商売が成り立っているのかもしれない。考えてみたら、昔の商店街やアーケード街も、売る側と買う側がご近所づきあいという雰囲気があった。今は大規模店舗が中心になり、人と人との関係もドライになった。お客も「自分で選ぶから構わないで」という雰囲気を醸し出している。私個人はその方が有難いのだが、結局は商売も人間同士のやり取り。血の通った会話をした方がいいのかもしれない。こうしたお店と客との関係が、ご近所同士でも起こっている気がする。いざという時、助けてくれるご近所がいるだろうか。そういう事も少し考えた方がいいかもしれない。

 

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