ほうたるのただ一灯の恋なりし

 

昨夜、まだ機嫌があまり宜しくなく、頭を冷やすために外へ出た。道中、よそのお宅の防犯用センサーライトが点灯するのに過敏に反応したりと、怒る材料を見つけて歩いているような自分を情けなく感じながら歩く。住宅街を抜けて線路沿い、中学校の通学路になっている、周囲に田畑が広がる道に出る。この道沿いの小川では、この時期になると蛍が見られる。それを見に来たのだが、最近小学校付近まで遊歩道が整備され、夜でも街灯が煌々と灯っていた。蛍は期待薄かと思っていたら、街灯と街灯の間のやや暗いところで、一瞬緑色の点が灯って、すぐ消えた。見間違いかもしれないが、見えたのはその一度だけ。これが伴侶を呼び寄せるための光ならば、この一瞬だけに賭けたのか。その切ないまでの弱い光に空しさを感じて詠んだ句。

動物とは感情を表に出して生きるもの。暗闇で光る蛍は、その光だけを窺い知ることが出来るが、感情や表情はこちらには見えない。それでも淡々と、しかし一生懸命生きている。つまらない事で機嫌を悪くする自分は小さい存在だ。そんな風に思い直した。

帰り道、雨蛙や牛蛙があちこちで鳴き、生きている証を示していた。どの生き物にも、今日が良き日でありますように。

 

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コダマヒデキ~音楽と俳句の部屋~