早乙女の彼方を見据ゑ働けり

 

年齢にかかわらず、田植えをする女性を「早乙女」と呼び、夏の季語とされている。イメージとしては紺絣に手甲、脚絆、菅笠に手ぬぐいといういで立ちで、手作業で腰を曲げ、下を向いて田植えをすると言ったところか。しかし、今は田植え機に乗って、背筋を伸ばし、じっと前を見て、遠くを眺めながら田植えする。終わればそのまま陸に上がって、機械ごと家路につく。昔は田の草を取るのも重労働だったと聞くが、やはり時代は大きく変わったと、実際に作業を遠目に見て実感して詠んだ句。

学生時代、車の免許を取得した。当時はオートマ限定が登場したての頃。免許取りたての頃は、「車を捜査している実感があるから」という理由で、マニュアル車に憧れていた。社会人になって、実際に手に入れた車は、当然のようにオートマ。さらに今は車に鍵穴すらなくなった。とんでもない時代になったものだと、いつも感心する。「ひたすら便利は人間の考える力を衰退させる。楽してはいけない。自分で体を動かせ」という昔気質の人も、だいぶ少なくなった。いざという時のアナログな対処法ぐらいは知っておくべきだとは思うが、次代の流れに人間が合わせていくのが自然というものだろう。

 

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コダマヒデキ~音楽と俳句の部屋~