花薺身を震はせて白拡ぐ

 

この季節になると、田畑や野原にナズナの花が咲き始める。白くて小さい花。元来それほど背の高い草ではなく、低い位置に咲いている。風が吹くと、小さい体を小刻みに揺らす様が、身震いしているように見える。その震えが畦道や畑の隅に、波のように広がっていく様は、白が震えながら拡がっていくように見える。それが震えながら仲間を呼んでいるようにも見えて、小さいのに頑張っていると感じて詠んだ句。

俳句に明確に「白」や「赤」などの色を入れるべきではないと言う人もいる。色に頼るのではなく、全体の情景から感じたことを詠みなさいという事なのだろう。その考えも説得力がある。文字で見て、その情景が抵抗なく頭に入って来るのが、俳句の醍醐味。これは好みの問題になって来るが、確かに色に頼りすぎるのは良くないが、厳格に「絶対入れてはダメ」というのは少し違う気がする。この句はあえてナズナの白にスポットを当てたもの。それでも情景が浮かぶのであれば、それはそれでいいのではと思う。しかし、忘れてならないのが、俳句は十七文字しかないという事。言葉を削ぎ落して削ぎ落して、本当に必要な単語だけを選ぶ。そこに本当に色そのものが必要かは、よく推敲して考える余地はあるだろう。色に限らず、言葉選びにも気を付けたい。

 

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コダマヒデキ~音楽と俳句の部屋~

 

 


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