花開く戊辰の志士を眠らせて

「もうそろそろ河津桜が咲き始めているかも」と聞いて、さして何も考えずにふらりと淀城に出かけた。まだいくら何でも早いかなと思ったが、もう既に三分咲きぐらいになっていた。確実に春らしくなっていると実感した。

淀城は徳川二代将軍秀忠の時代に建てられた城。そこから約260年後、この付近は戊辰戦争では鳥羽伏見の戦いで、多くの犠牲者を出した。実際淀城周辺に、犠牲者の慰霊碑が立っている。この土の下には、戊辰戦争で散った命が眠っている。その犠牲の上で、今年も河津桜が咲いた。この犠牲の上で、今の社会があり、今の風景があるという事を実感して詠んだ句。

実は今まで淀城には実際に行った事がなかった。京阪電車・淀駅のすぐ隣にあり、車窓から見える石垣を眺めるだけで、いつも素通りだった。実際に行ってみたら、残るのは石垣だけ。中は公園と化し、ブランコやジャングルジムが置かれていた。この地は巨椋池の干拓などで地形が変わってしまい、本丸の一部を除いて全て破壊されたという。今残るのはほんの残骸。歴史は無常としか言いようがない。それでも、春になると河津桜が咲き誇り、人の目を楽しませてくれる。京阪電車開通の際、漸く保存運動が高まった事により、今の立派な石垣と河津桜が現在まで残っている。消えるだけが歴史ではない。どんな形であれ、ここで何があったのかを伝える場として、その役目を果たして貰いたいものだ。

 

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