横たはる目線に雀老梅忌

 

2月20日は俳人・内藤鳴雪の忌日。「鳴雪忌」、「老梅忌」と呼ばれ、春の季語とされている。内藤鳴雪は幕末の伊予藩士で、明治に入ってからは藩の常磐会宿舎の監督となり、そこの舎生だった正岡子規の影響で俳句を始め、のちにホトトギスの長老となった。そうした背景から、この季題の例句に「子規知らぬコカコーラ飲む鳴雪忌(秋元不死男)」という句が掲載されていた。子規と言えば「病床六尺」で知られるとおり、長く病の床にあり、その狭い空間と視野の中で句作を続けてきた人物だ。

朝目覚めて、ふと窓から庭を見ると、雀が降り立って、また飛んで行った。二階からの眺めなので、少し違うかもしれないが、病床にあった子規の目線で見ると、窓という額の中に不意に雀がフレームインするような感覚だったのかもしれないという感覚を覚えた。そしてそんな子規の影響を受けた鳴雪に、間接的に思いを抱いて詠んだ句。

若い頃は、色々な観光地や名所に実際出向いて、そこの風景や情景を実際に目で見て感じた事を句にしていた。今でもその傾向はまだ強い。なので、緊急事態宣言下、不要不急の外出が憚られる中、遠くても通勤圏内に行動半径が限られてしまったのは本当に困った。しかし、そういう時だからこそ、身近にいて感じなかった事が再発見できるに違いないと捉えるようになった。正岡子規には遠く及ばないが、自宅にいて窓を眺めるだけでも景色は時々刻々と変わる。そんな変化を敏感に捉える力を、この状況下で磨きたい。

 

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