名瀑や飛沫を沢のあちこちに
「方円」2015年8月号清象集掲載。どこの滝を訪れたのか忘れたが、同月の句に「水源を辿れる鴨足草(ゆきのした)沿ひに」というのがあったので、場所は名水で有名な滋賀・醒井周辺か。
夏場に滝を見に行く際、よく「マイナスイオンを浴びに行く」という言い方をするが、それは勢いよく落ちる滝がもたらす滝しぶきを浴びる事を指している。滝が大きければ大きいほど、落差が高ければ高いほど、多く浴びる事になる。この句の滝も大きな滝だったと見えて、滝つぼから下流に至るまで滝しぶきが飛んでいる。そんな様子を表している。
お分かりの通り、この句の場合の「飛沫」は「ひまつ」ではなく「しぶき」と読む。新型コロナウィルス感染症の影響下で、この言葉の特に「ひまつ」という読み方が、大きくクローズアップされた。しかも「飛沫感染」や「飛沫防止」などと、この言葉の負の一面だけが社会的に認識されてしまった。なので、今この字を「しぶき」と額面通り読んでくれる人は、残念ながら少ないだろう。言葉は生き物であり、常に意味合いを変化させて生き残るものなので、そのうち「マイナスイオンをもたらす滝しぶき」という爽やかなイメージが、社会的に覆い隠されるのではないかと心配している。何が起こっても不思議ではない昨今、決して杞憂とは言えない。
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