(その2)【厚生労働省】平成23年度「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」まとめ | travessia

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(その2)平成23年度「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」まとめ
~新認定基準に当てはめた「出来事別の支給決定件数」、第1位は「
仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」



今回も引き続き、厚生労働省の平成23年度の「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」について、ポイント別に詳しく見ていくこととしましょう。


さて、今年度の発表で特に注目したいのが、「出来事別の支給決定件数」についてです。

近年、精神障害の労災請求件数が大幅に増加している状況を受け、平成23年12月26日厚生労働省は、従来用いてきた判断指針を廃止し、新たに「心理的負荷による精神障害の認定基準」を策定しました。

認定基準策定のポイントは以下の通りです。

 これまで全ての事案について精神科医の合議制により判定していたのをやめ、判断が難しい事案のみに限定した。
 合議制をやめたことに伴い、判断のバラつきが出ないよう具体的な事例を挙げた分かりやすい心理的負荷評価表を定めた。
いじめやセクシャルハラスメントについても具体的な例を上げ、それぞれについて強度を定めた。またこれらの出来事が繰り返される場合、その開始時からすべての行為を対象とすることにした。

この「心理的負荷による精神障害の認定基準」の別表1に挙げられている「具体的な出来事」の事例に当てはめ、集計されたデータが、今年度の「出来事別の支給決定件数」として発表されたのです。

このデータを見てみると、支給決定件数は

位:「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」(52件)
位:「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」(48件)
位:「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」(40件)

といった順に多くなっています。

1位の「仕事の量や質が大きく変化した」という点から、やはり、長時間労働が影響を及ぼしているのかが気になるところです。 

先般の認定基準でも、発病直前1ヶ月におおむね160時間を超えるような時間外労働を行った場合、極度の長時間労働=特別な出来事に該当すると見なし、心理的負荷の総合評価を「強」とするとしています。


それでは、精神障害として支給決定された事案の1ヶ月平均の時間外労働時間数別件数を見てみることにしましょう。 

すると、20時間未満が63件と最も多く、次いで、100時間以上120時間未満が38件、80時間以上100時間未満が29件、120時間以上140時間未満が28件と続きます。


うち、自殺者数を見てみると、100時間以上120時間未満が15件と最も多く、次いで120時間以上140時間未満および80時間以上100時間未満が9件と同数、一番注目されていた160時間以上は7件となっています。

では、より分かりやすくするため、具体的に時間外労働数ごとの自殺率を出してみることにしましょう。すると、以下のような結果が出ました。




このデータから、支給決定された件数だけを取り上げると、長時間労働との関連が低いケースも多く見られるものの、1ヶ月40時間以上の長時間労働を恒常的に行なっている場合、自殺する危険性が急激に高まることが見てとれます。

ところで、1ヶ月40時間というと、「短いな」と感じる方もおられるのではないでしょうか。
しかしながら、この時間数は、36協定における時間外労働の限度基準として定められている「1ヶ月あたり45時間」と、ほぼ合致しています。



この結果から鑑みるに、やはりこれからは1ヶ月45時間という限度基準を従来よりも重視していく必要があるように感じます。

そして、この限度基準を超えると、精神障害の発症への影響や、自殺の危険性も高まるということに注意しておいた方が良いでしょう。


次回は、「出来事別の支給決定件数」の、もう1つの注目ポイントについて、お話ししたいと思います。

◆参考URL
厚生労働省:平成23年度「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」まとめ
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002coxc.html

厚生労働省:心理的負荷による精神障害の労災認定基準を策定
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001z3zj.html