私はトロントにある“日本”に興味を持ち、日系文化会館(Japanese Canadian Culture Center, JCCC)などを訪れたりしていた。(26トロントの中の日本・日系カナダ人コミュニティへの興味、参照)
トロントの中の“日本”、日系カナダ人のコミュニティを、より深く知りたいと思った私は、日系コミュニティに関わるボランティアに参加しようと思った。
日系文化会館の受付でボランティア登録用紙をもらい、後日提出した。他にもインターネットから、JAVA(Japanese Visitor Association)や新移住者協会(New Japanese Canadian Association)などのボランティアにも登録した。
JAVAが発足した頃、新移住者協会がそれをサポートしていたこともあり、これらの団体がそれぞれ個別に活動している、というものではないようだ。JAVAと新移住者協会のボランティア案内をメール送信する人は同じだし、JAVAで募集していた日系文化会館でのボランティアに参加したとき、同じ部署で働いていた人は、別の募集で来たと言っていた。
そのJAVAで募集していたボランティアとは、日系文化会館で行われる、新移住者協会が開催する夏の大バーベキューパーティーだった。
当日は、みんなに白ご飯、焼肉、とうもろこし、サラダ、キムチなどが振舞われた。
色々なものを販売するブースも並んでいた。日本の懐かしいおもちゃを販売するブースや、かき氷や饅頭を販売しているブース、ヘアカット、服屋さん、本屋さんなど。
私は、新移住者協会の、コマやでんでん太鼓、竹とんぼ、けん玉、お手玉など、昔懐かしのおもちゃを販売するブースを担当させてもらった。
そこには、ボランティア募集のメールを送信していた、当時の責任者である木原さん(仮名)という男性と、その奥さんで、カレッジで日本について教えているという芹香さん(仮名)、トロント大学の博士課程で言語学を学ぶベテランのボランティア・沢山さん(仮名)という女性がいた。
私がいたおもちゃ販売のブースには、様々な人が訪れた。
万華鏡を楽しそうに回す子供、けん玉に熱中する子供、達磨落としに見入る子供など、珍しいおもちゃに目を輝かせる子供たちと、昔自分が遊んだおもちゃを懐かしそうに、そして子供のようにはしゃいで手に取る大人たちの姿があった。
小さな子供を連れた夫婦は、子供にゆっくり、「あおい、けんだま」「みどりの、けんだま」と、実物のけん玉を手に取りながら教えていた。子供は「おもしろい」と言った。こうして小さい頃から日本語を覚えさせる努力をしているんだな、と感じた。そして、単純なようで奥が深い日本のおもちゃのすごさを再確認した思いだった。
木原さんは、「売りつけようなんていう気は全くないし、おもちゃを紹介して楽しんでもらって、買いたいと思うものがあれば買ってくれたらいいだけ」と言っていた。のんびりしたブースだった。
私は途中2時間ほど、日系の子供たちとロビーでコマ回しをするために店を離れてた。
子供の頃にコマ回しをやったことはあるが、何度やってもコマが回せなかった。
そんな私にコマ回しを教えてくれたのは、直人君(仮名/当時15歳)。直人君の教えの下、私と一緒にコマ回しに挑戦したのは、直人君の弟の正也君(仮名/当時12~13歳と思われる)だ。
コマ回しに熱中する私たちを、かつての自分たちの姿を重ねているのか、微笑ましい光景を見るように温かく見守ってくれる大人たち(私は現地で13歳以下に間違われたこともあり、幼く見える方だったので、私も子供の1人と思われていたかもしれない)。
「こうすればもっと上手く回るんだ」と、アドバイスをくれながら、自分も楽しそうにコマを回す大人もいたし、おそらく初めて見るコマ回しに興味を持って、自分もやってみたい!という小さな子供たちもいた。
何とか駒を回せるようになって店に戻ると、木原さんは、「楽しめるのが一番、人のため、なんて大義名分ではボランティアは続けられない、自分が楽しくないと」と言った。
日本の友達に今回のボランティアのことをメールで話すと、「日本のお祭の露店とかでけん玉とかお手玉売ってるのは見ないし、日本よりずっと古きよき文化を大切にしてる感じがする」と言っていた。
私もカナダに来て、日本にいたときにはあって当たり前だったものがないことも多いが、なければないで何とかなるのは確かだ。だが、日本を離れてみたことで、日本っていいな、と感じられたりもする。きっとカナダに移住してきた人たちにも同じ思いはあるだろう。
今回のボランティアで日系社会を垣間見ただけでも、日系人はお互いによく助け合っていと思った。誰かの庭でできた紫蘇を分け合ったり、新しい移住者に対してもとても気さくで、彼らがリラックスできるよう配慮しているように見えた。