新たなハウスメイトたちとの生活の一方で、私はトロントの色々な場所にも行った。

チャイナタウンとコリアタウンにもよく行った。この中では、多くの日本の物を見ることができる。日本食も豊富に売られている。

 

トロントに来て思ったのが、東洋系以外の人々は、とりあえず東洋系は中国人だと思っているし、特に、英語の怪しい東洋人=中国人という構図なようだ。トロントにおいて中国人のコミュニティはとても大きいので、彼らは英語が話せなくてもトロントで生活できる。韓国系も多い。だが、日系はマイナーなようだ。

ホストファーザーのアンソニーは、日本は豊かな国だから、日本人は外国へ移住する必要がない。だから、ここでは日本人は少ない、と言っていた。

 

私はトロントの中の“日本”を探してみたくなって、色々探してみた。

そして、トロントには日系文化会館(Japanese Canadian Culture Centre, JCCC)があることを、日本人向け留学センターにあった、カナダにロングステイする用のガイドブックを見て初めて知った。

 

留学センターで行き方を聞いたが、スタッフさんは全然知らないようだった。それでもインターネットを使って調べてくれて、行き方を教えてくれた。普通の観光ガイドブックには載っていない。あまり有名ではないのかな?という印象だった。

 

トロントで“中国”や“韓国”を見つけるのは簡単だ。けれど、“日本”は、普通に過ごしていたら、なかなか見つからない。確かにチャイナタウンやコリアタウンでは、たくさんの日本の物を手軽に見ることができるが、それは“日本”であるというより、“中国”“韓国”の一部だと思った。トロントにおいて、日本文化は、中国文化や韓国文化の中にある…それが、トロントで1ヶ月ほどを過ごした時点での私の感想だった。

 

世界各国から移民が集まり、本当に様々な人種がいて、コミュニティがあるトロント。この移民の街で、日本は、日系のコミュニティはどのように存在しているのか。もっと知りたいと思った。

 

まずは日系文化会館(Japanese Canadian Culture Centre, JCCC)に行ってみた。

予想よりはるかに大きくて立派な建物だった。なのに(おそらく)認知度が低いなんて、本当なのかと思った。玄関には石灯籠が置いてあり、和のお土産や人形が飾ってあったり、畳の部屋があったりと、日本人の私には落ち着ける空間だった。こんな素晴らしい場所なのに勿体ない、と思った。

 

このときに、受付のお姉さんからJ-townの存在を教えてもらった。私はその足ですぐ、Jタウンに向かうことにした。お姉さんは、「タウンというほど大きくないけど…」と言っていた。

 

受付のお姉さんに場所を説明してもらい、電車とバスを乗り継いで、J-townへ。バスの運転手さんに場所を聞いても、「知らない」と言われた。日系文化会館で取ってきた無料冊子に載っている地図を見せて、「TOYOTAの隣だ」と言うと、場所が分かったようで、そこに着いたら教えてほしい、と頼んで席に座った。

トロントの地下鉄フィンチ駅からバスで20分くらいか。バスから「TOYOTA」の看板は見えた。本当にその隣にJ-townがあった。バス停からも近い。

 

J-townは確かに、「タウン」と呼べるほど大きくはなかった。日本の食材を売るスーパーマーケット、フードコート、本屋さん、ブティック、美容院などが集まっていた。

 

その後も、よくJ-townに足を運んだ。ここで買って食べたケーキの、日本らしい繊細さが心に残っている。現地のケーキの、青やら紫色をした、砂糖の塊を食べているような大雑把さも面白くて結構好きだったが、やはり日本の繊細なケーキは美味しく、懐かしくてほっこり嬉しい気持ちになった。

 

後に、きっかけは忘れたが、国際交流基金トロント日本文化センター(The Japan Foundation, Toronto)の存在も知った。日本語書籍がある図書館や、日本の漫画展といった期間限定の展示会、日本映画の上映なども行っていた。

 

トロントの中の日本や日系コミュニティに、どんどん興味が湧いていった。