無口で無垢なマーメイド。
きっと、昼間に外に出ることは出来なかったでしょう。
魔女からの薬を飲んだ時点で、彼女は死んだ。
呼吸を必要としない生きる屍。
陸に上がって立てないのは日に当たって躰が崩れかけていたから。
深海にいて、急に陸に出て。
その気圧に耐えられる躰なんて中々ないよ。
魔女が教えたのは呪い。
傍にいたいと望む彼女を穢すステップ。
愛を伝えられない苛立ち。
愛を奪われる憎しみ。
愛する人を道連れにする方法。
結局、何にも穢されなかった聖女は、陽の中に躰を投じて泡になった。
魂の器が崩れていく瞬間。
彼女は何を想ったのだろうか。
拝啓 信愛なる王子様
どうか
どうか
一度だけでも
消えた私を想って
そして 忘れて
貴方が笑うことで
私は幸せを思い出すでしょう
さよなら
さようなら
“あいしています”
声にも綴りにも出来なかった言葉を波に呑ませて。