『広辞苑』(第六版)を見ていたら、次のような見出しが目に飛び込んできた。
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きんいつ【均一】
(キンイチとも)
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ただし「きんいち」という見出し語は、ない。しかし、「きんいち」でもよい、ということなのである。「きんいち」は誤読である、と私はずっと思っていたのだった。
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『広辞苑』以外、例えば『新編大言海』(昭和57年2月/『大言海』初版は昭和7年)、『国語大辞典』(昭和57年1月)、『明鏡国語辞典』第二版(2011年)では、「きんいつ」のみである。
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そこで、ついでに「一」が下に付く熟語を『角川漢和中辞典』から引用させていただき、『広辞苑』第三版(昭和61年10月)、第六版(2011年)での読みを調べてみた(両者において、下記の分類に変わりはなかった)。参考のため、右側に『明鏡国語辞典』第二版の読みを挙げた。
ちなみに、「一」の読みの「イチ」は呉音、「イツ」は漢音であるという(『角川漢和中辞典』)。
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『広辞苑』 (色文字は、『明鏡国語辞典』)
「いつ」の類
画一 (かくいつ) (かくいつ)
帰一 (きいつ) (きいつ)
純一 (じゅんいつ) (じゅんいつ)
単一 (たんいつ) (たんいつ)
統一 (とういつ) (とういつ)
同一 (どういつ) (どういつ)
「いつ」が主の類
均一 (きんいつ、きんいち) (きんいつ)
専一 (せんいつ、せんいち) (せんいつ)
不一 (ふいつ、ふいち) (ふいつ、ふいち)
唯一 (ゆいいつ、ゆいいち、ゆいつ) (ゆいいつ)
《古くから「ゆいつ」とも読んだ
が、「ゆいいつ」が本来の読み
方。》という解説がある。
「いち」が主の類
逐一 (ちくいち、ちくいつ) (ちくいち)
万一 (まんいち、まんいつ) (まんいち)
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『広辞苑』において許容範囲が広いのは、「時代の要請」(『広辞苑』第六版の序)ということなのだろうか。
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私は、「100円均一」を「100円きんいち」と言う人がいると、「きんいつ」なのになあ、と不遜にも歯がゆく思った。スーパーの売り出しで「五百円均市」などというのを見ると、「均一(きんいつ)」を「きんいち」と誤読して、それをもじっているのだろう、と思った。…
どちらも、思っただけで良かった、口に出して言わなくて良かった、ということになるのだろう。いずれにしても、迂闊な話ではある。
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蛇足。
「単一(たんいつ)」とは別の用語として、単一形乾電池の略「単一(たんいち)」がある。「純一(じゅんいつ)」を「純一(じゅんいち)」と読めば、よく耳にする人名である。