心理学入門① サトウテツヤ・渡邊芳之 | 怠け者のつぶやき

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今まで勉強してこなかった怠け者が
今更だけど本でも読もうか、ってことで色々と
本を読んだりニュースを気にしたりしてつぶやいてます。

1章では臨床心理学を扱っている。臨床心理学とは、個々の人と接していく心理学の事であり、医療、教育、心理査定を生業とする。手法としては、心理療法(行動療法を含む)、カウンセリング、発達臨床、学校心理、非行臨床、ガイダンス、心理検査、異常心理等がある。

 臨床心理学で解決されるべき問題は、複数の原因である事が多い。「学校に行きたくない」と言う問題があるとしても、原因はコミュニケーション・スキル不足やいじめ、勉強ができない等様々である。要因は意識的であることもあれば、無意識の中にある場合もある。PTSDや躁鬱病も臨床心理学の範囲である。

 第2章では、性格心理学について扱っている。性格心理学は、性格学としてギリシャ時代から話題に上がっていたものを、100年ほど前に心理学として扱った学問である。性格を分類する方法としては、類型論と特性論の考え方によるとらえ方が分かりやすい。類型論とは、いくつかのタイプに性格を分けてしまいどのタイプに似ているかを分ける方法である。これはどの様な性格がイメージしやすいメリットがあるが、細かな性格は無視されてしまい、間違いも多い。特性論は、「仕事熱心」や「思いやりのある」などの要素(性格特性)を説明する事で、性格を表す手法である。特性論では、性格を簡単にも詳細にも言える。さらには誰にでも有るわけではない特性(個人特性、あることに強いこだわりがあるなど)、と誰もがある程度持っている特性(共通特性、熱心さなど)に分ける事が出来、共通特性は程度を数値化する事が可能である。共通特性を用いて、人の基本的な性格を表そうとした研究により、5つの項目(ビッグファイブ)が確立された。ビッグファイブは、神経症傾向(不安、傷つきやすさ等)、外向性(温かさなど)、開放性(審美性など)、調和性(信頼など)、誠実性(良心性など)である。

また性格について大きな論争になった事の1つが、遺伝か環境かという事である。昔は遺伝と環境のどちらかによるものだという考えが対立していたが、今では遺伝が約40%、環境が約60%程度とする考え方が主流だ。

そして性格について、もう一つ大きな論争になった事は、性格は変わるかどうか、と言う点についてである。性格の不変性は、状況が変わると性格が変わる事(会社と自宅、習い事など)から、可逆性をもった性格の変化(モード性格)は誰もが常に行っており、それぞれの状況に適応するための自然な変化である。それに対して自己は、自己同一性(アイデンティティ)の強い意識の中に統合されてしまうため、常に同じであると錯覚をしている。一方で環境が変わると不可逆的な性格の変化も起きており(学校の卒業、職場の異動等)、これを性格変容と言っている。性格変容は大きな環境の変化があって初めて起きるため、性格を変える事は相当な困難である事が分かる。

 第3章は、社会心理学を扱っている。人間は集団を形成し、社会的相互作用によって起こる。社会を形成するうえで、人間は社会的生物であるため、社会に適応するように一部の機能は生得的に備えられていると現在の研究では考えられている。

 ここで取り扱っている内容は、性格の判断の仕方、コミュニケーション方法、人を好きになるメカニズム、他人への援助と攻撃、集団が人を変える、群集心理についてである。

人の性格は、相手の行動を観察し、これを類型化された「ステレオタイプ」にあてはめる方法がとられやすい。ステレオタイプは、「血液型別性格」や「出身地による気質」など様々があるが、不正確である事が多い。それと同時に、一定の行動が行動特性を表していると考えられる事も多く(原因帰属)、これは周りの状況によって、割増原理(自発的な行動と取られる)や、割引原理(不可抗力とみられる)によっても変化するが、多くはバイアスがかかってあり、不正確である(基本的帰属錯誤)

良いコミュニケーションには、「傾聴と受容のサイン」が重要であるとされる。コミュニケーションは主に言語、記号を用いた「言語的コミュニケーション」と、態度や表情などの「非言語的コミュニケーション」に分けられる。傾聴と受容のサインは、言語的には相槌を打つ、相手の話を要約する等、非言語的には、うなずく、視線を合わせる、頭の高さを合わせると言った行動がとられる。その他にも説得的コミュニケーションが必要となる事も多いが、この場合誰が(説得者)、どのように(説得方法)行うかが重要である。説得者は、その業界の権威や、有名人などが高くなる傾向にある。説得方法にはさまざまな方法があるが、皮肉にも最も行動を変える効果がある方法は、無理やりやらせることである。無理やりやっていると心と行動の中に矛盾ができ(認知的不協和)、矛盾を解消するよう修正されるからである。

人をどの様に好きになるかについては、近くにいる(近接性)、自分と外見等のレベルがあっている(マッチング効果)、生活や習慣が似ている(共通性)、性格ではお互いを補える(相補性)、好意を持っている(好意の返報性)等が挙げられる。また好きになる時期は、強い不安を感じた時や、その人といる時に感情の高ぶりを感じるときである。「吊り橋効果」に代表される感情の高ぶりは、その人と一緒にいる時に毎回好意的な感情になる事が多いと、その人とその感情を結び付けることから来る(~さんといるといつも楽しいと思うと、~さん=楽しいと帰属される等)。一目惚れがどうして起こるかと言う事については、過去の経験より「般化」された帰属意識を基に、ある人を判断している事から説明されている。

人間は援助と攻撃性を持っている。これは、社会に関わる「向社会性行動」と社会から目をそむけた「反社会性行動」ともとる事が出来る。援助は一般的に遺伝と社会的強化によるものと考えられており、共感性や内的統制(他人の行動を自分の責任と考える人)の高い人に見られ、社会的地位が低い者や、きちんとした格好をした人が受けやすい。一方で攻撃は、自分の危害を加える相手や利益を犯す人に対して生得的に備えられている。これは採食活動を促進するための適応だが、現在の社会的行動には不適応となる場合が多い。

社会的行動は、集団の結びつきによって変化する。集団は、ルールを守らせようとする圧力(集団的圧力)や、集団にとどまるために行動を変える(同調行動)をする傾向にある。また有名な「アイヒマン実験」では、リーダーに命令されると、人は時に残酷な行動をとりやすくなるという事が見られた。

また時に、見知らぬ人同士の集団「群集」が一体となる事がある。この時、不確かな情報は流言やデマが流れやすく、パニックが起きやすくなるため、注意が必要である。