マックから戻った黒木は手早く皆にポテトを手渡す
普段よりはあっさり寄り道を切り上げた結果
ポテトは意外に温かかった
青田が話しかけてくる
｢黒木ｻﾝ、色々と(ありがとうご)ザイマス!!｣
黒木は思い出したかの様に話す
『ﾝ？良いよ♪忘れてたけどｱｵも30,000円払ってね？』
｢え…？二人に30,000円ずつ払ったんじゃ？｣
『あの場をどうにかしたでしょ？その代金を俺にください。』
｢へ？｣
『授業料でぇす』
｢…分かりました｣
青田は口調は軽いが断ってはいけない空気を黒木から感じ取った
青田から貰った3万を無造作にﾎﾟｹｯﾄに入れる黒木
赤岩はそれを苛立ちながら眺め、嫌味を言った
｢何もしなくても30,000勝ちか…
たまんねぇな…｣
黒木は鼻で笑い飛ばす
『確かにたまんないよね。
朝の並びで５万も浮いちゃWW』
｢…黒木ｻﾝ？…って事は…？｣
青田と黄村がまさかとは思いつつも確認する
『あぁ、ｱｲﾂﾗには20,000だけWW』
｢な!?｣
『言ったでしょ授業料って』
黒木は誰に言うでもなく誰に目を合わせる訳でもなく
とつとつと話し始めた
『そもそも俺達のやる事ってまず何なの？
縄張り争い？
喧嘩？
それとも罵り合いか？
違うね…
ただ単に金を稼ぐ事だ。
あの二人に何を打つか聞いた？
俺達とかぶった？
ｺﾝﾄﾞﾙかﾀｺｽﾛかﾚｯﾂしか打たされない俺達が
今日だけ新台打たされる？
まず無いよね。
だったら話し合いでどうにかなったはず。
良い？
まず何しに並んでんのか考えろ。
喧嘩したいのか
金を稼ぎたいのかを…
もっと大前提に｢結果、何がしたいか｣を考えろ。
閉店後にｷｬﾊﾞに行きたい。
ｿｰﾌﾟ行きたい。
飯が食いたい。
眠りたい。
じゃあ大切な事ってどっち？
暴力か金か。
何をしたら得するかなんて、少しだけ頭を使えば分かる。
頭を使わないから、君らは朝から3万ずつ失う結果になった。
バカだからじゃねえ。
頭を使わないから。
今回は3万で済んだ
相手も頭を使わないで
目の前の2万で妥協したからWW
次に失うものは何か分からないよ。
出したﾅｲﾌを平気で突き刺すﾔﾂだって
世の中には居るのだから。』
黒木はひとしきり話すと煙草に火を点けた
『そろそろ二人が来る頃か…』
笑顔に戻った黒木は最後に一言付け足す
『今日は皆最悪でも3万勝たないといけなくなったねWW』
三者の対応は様々だったが
やがて自分の置かれた立場に気づき始めていく
(赤岩も青田も黄村も今日からは必死に打つだろう)
いつもと違い、
らしからぬ気合いの入った３人の顔を見て
黒木はそう感じた
ただしこれからやる事が
屑にしか出来ない作業だと気づく程度の知恵は
４匹の蛾を合わせた所で持ち合えるはずも無かった…