「あ!黒木サンお疲れッス!!」
「(おはようご)ザイマァス!!」
いつもの店の階段をいつもの様に一個飛ばしで駆け上がると、青田と黄村の声がした
『オハョ♪サンは要らないって…WW
俺一番年齢下だし♪』
「いぇ、昔からいる人にタメ口なんてきけませんょ!!」
『う~ん… 昔ったってなぁ…
そんなもんなの…?』
「て言うか黒木サン…」
青田がチラッと後ろを見ると、
坊主頭の大男がこっちを見下ろしてる
「黒木ぃ…お前、毎日人が起こしてやってんのに、
何で毎回遅れてやってくんだょ!?」
(うるせぇなぁ、朝から…
俺の金でデザートまで頼みやがってる癖によ…)
黒木は理由を少しだけ考えた
が、何言っても文句しか返ってこないのも分かっていたので
大男をからかい始める
『ごめぇ~ん、今日は「あの日」なの♪
わかる? わかんないか♪
赤岩君みたいな脳味噌きんにくんにはWW』
「てめぇはそうやって人おちょくって、
何が楽しいんだ!!」
『はぁい♪ とっても楽しくありませんよぉ♪
寝起きからブタゴリラと会話をしなくてはならない自分が、とても不幸で仕方ありませぇん♪
どうせなら内田有紀とピロートークかましてた方が数億倍マシでぇす♪』
「…ブチ殺す…!!」
赤岩が階段を1段下りてくるのと同時に、
下から誰か上がってくる気配がした
青田と黄村がまず並び始める
並んでいないのは赤岩に黒木
黒木はたしなめるように赤岩に話しかけた
『ま、頼まれなくてもいつか死ぬからさ…
今は場所取っといた方が良いんじゃない?
台確保出来なかったら君も死ぬょWW』
「…フン」
大人しく場所に戻った赤岩を尻目に、さりげなく1番目に陣取る黒木
並ぶ時は1~6番手までにいれば特に台の確保には問題は無いのだが、
赤岩の近くに居たくなかったのと
今いる「パチスロビル」は階段が外付けだった為に、外の風景を見ながら並ぶのがここ最近のお気に入りであった
決まりはないが
1番目~3番目までの並ぶ場所は踊り場だった為、階段に座るより多少は空間に自由がある
壁にもたれて座り込みながら階下を見下ろし
(少しだけ王様の気分なり♪
いゃ、「なり」だと殿様かWW)
などと考えながら6時間後にシャッターが開くのと19時間後の閉店を心待ちにする
買ったばかりのMDウォークマンでユーロビートを聴きながらhotのミルクティーを飲み、
お釣りで大量に買った漫画を青田達にも渡しながら、
無駄に長い時間をいかに暇潰しに費やすかに頭を使っていた
けれども結局は居眠りするのが一番と
目を閉じるのにそれほど長い時間は掛からなかった
(今日も何事もなく勝って終わるだろう)
黒木の中では半ば当たり前の現実であり、
結果も大体想像出来てた事だった…