Q. 月嶋さんがトランス☆プロジェクトを立ち上げる以前は何をされていましたか?
プロとして舞台に出たり、パーフェクトTVのレギュラー番組でナレーションをしたり、映像に出たりしてました。
事務所に入っていたので映像関係の仕事が多かったです。
万有引力の舞台に出していただくのもこの頃からでしたね。
※演劇にあまり詳しくない方のために・・・。
万有引力は「演劇実験室◎万有引力」といって寺山修司さんの「天井桟敷」を引き次いで、J.A.シーザー主宰の劇団です。
ホームページはコチラ http://www.banyu-inryoku.net/
Q. 月嶋さんとGIDの出会いと、トランス☆プロジェクトを立ち上げたきっかけを教えてください。
1998年にSRS(性別適合手術。いわゆる「性転換手術」)が認められた、という新聞記事を読み、テレビのドキュメンタリーで当事者の方々の様子を知り、自分に何か出来ないかと思ったのがきっかけです。
最初は正直、世間の偏見や差別に苦しんでいる様子にびっくりし、自分に出来る事があれば...というスタンスだったんですけど、 GIDの人と出会って、「まず 今のありのままの自分を認めることから出発する大切さ」に気づかせてもらいました。
「何故トランス☆プロジェクトをしているのか」ということについては、私自身明確な答えを持っているわけではないのですが、私自身、子供の頃から「なりたい自分」がいて、でもその理想には「なれない自分」がいて、その「なれない自分」を認める事が出来ずにいました。
それがGIDの人と接しているうちに「ありのままの自分」を認める勇気をもらったように思います。 GIDの人と出会って、「まず 今の自分を認めることから出発する大切さ」に気づかせてもらいました。たとえダメなところがいっぱいある自分でも、そういう自分を見つめることで次へ進んで行ける...そんな気がします。
私は当事者ではありません、と同時に自分らしく生きようとしている意味では 私の中では同じなのです。勿論、そんな事を言ったら「悩みの深さが全然違う」という人もいるでしょう。おそらくそうだと思います。 同じ土俵に立つ為には、少なくとも、GIDの人たちが望む生き方を大きく阻んでいる法律の改正(戸籍の改正など)がなされ、「治療」に保険が利くようになり、偏見がなくならなければならないと思います。
(戸籍については2003年7月16日に特例法が認められ、条件付きではありますが、1年後の施行を待って、戸籍の性別の変更を認める道が開かれました。) それでも私の中では、決して他人事ではない、と思っているのです。みんなが生きたいように生きられる、少なくとも他人から阻まれる事のない社会は誰だって望んでいるのではないでしょうか?
では、その為に私に出来る事は何かと考えました。そして、GIDをテーマにした舞台を作ったらたくさんの方に観てもらえると思ってトランス☆プロジェクトを立ち上げました。プロデュースなんてしたことがなかったので それがどんなに大変な事か全く知りませんでした。
もし知っていたら、もしかしたら始めていなかったかもしれません。
お金も必要だし、たくさんの人の協力も大切です。何もない私が舞台をプロデュースする事がどんなに無謀な事か気付いた時にはもう戻れない処まで来ていました。それでも幸いな事に本当に人との出会いに恵まれ、次々に協力を申し出てくださる方が現れ、ボランティアで手伝ってくださっています。そういう方々に支えられて立ち上げた1998年から今年(1012年)でもう14年、今年の10月には第7回公演を上演しました。
ほとんどの偏見は知る事でなくなると思います。事実を知ってもらって理解をしてもらえたら、もしかしたら、社会の制度も変わるかも知れません。実際2003年、春に行なった[ハローワークにて]という事実を元にした私たちの寸劇を見て衆議院議員(当時)の家西悟さんが国会で質問をして下さり、ハローワークの性別の記載が見直されるようになってきているそうです。私たちの活動が目に見える成果をもたらしたのです。続ける事の大切さを感じました。
勿論トランス☆プロジェクトのメンバーには当事者の方もいます。最初の私の呼びかけに対して協力を申し出て、ずっと私を支えてくれています。その人たちがいてくれなかったら私はとっくに挫折していたと思います。彼らはトランス☆プロジェクトで「自分の居場所を見つけた」と言ってくれました。
そして、私もまたそうなのです。
彼らのお蔭で「ありのままの自分を解放できる場所…それがトランス☆プロジェクトだ」と言えるようになりました。私はGIDの人から教えてもらった事、「もっともっと自分の生き方を考え、ありのままの自分を認める勇気」を感じ続けて行きたいと思ってトランス☆プロジェクトを続けている気がします。
Q. トランス☆プロジェクトはGIDをメインテーマに掲げていますが、月嶋さん自身がGIDでないことで、代表として困ったことはありましたか?
それはいっぱいありましたし、今もあります。
まず知らないことがいっぱいで勉強するところから始めたのですが、当時はまだネットで調べることがあまり出来なかったので、 本を探して片っ端から読んだり、「TSとTGを支える会」という団体の一般公開のシンポジウムに出席したりしていました。
脚本を書くにあたって、GIDのことでチェックして下さる人が必要だと思い、 虎井まさ衛さんの「FTM日本」というミニコミ誌に呼び掛けて協力してくれる当事者の方々を募りました。
でも「やっぱり当事者のことは当事者にしかわからない」という風に言われたこともあって、自分が本当に理解できているかどうか今もわかりません。
人によっても違うので当事者同士でもお互いを理解できない場合もあるみたいだから、当事者ではない私にはその人を理解しようとし続けるしかないかなと思っています。
だから今は「教えて」「知って欲しい事は言って」と言うようにしています(笑)
Q. これまでの公演で印象に残っている想い出はありますか?特にGID絡みで何かあれば教えてください。
それは何と言っても最初の公演です。
本当に色んなことがありました。
稽古が始まってからも稽古に行く度に毎回何かが起こっていて、障害物競走みたいでした(笑)
発声練習で歌を歌った翌日から来なくなってしまった人もいました。
後でその人を公演に誘った人から聞いたところ、声にコンプレックスがあったそうです。
もうキャストも決まってその人も配役をされていたので、脚本を書き直して貰うことになりました。
日本初ということでマスコミの取材も凄くてテレビの取材などお断りせざるを得ない状況になってもったいないこともありました。
毎回、脚本については一番神経を使うところです。
知識レベルでの間違いは避けたいのでその辺はいつも苦労します。
とにかくいつも試行錯誤しつつその時に出来るベストを目指しているつもりです。
Q. トランス☆プロジェクトが今後もGIDをテーマに訴えていくとしたら、どういった内容を扱っていきたいですか?
トランス☆プロジェクトはGIDを切り口にはしていますが、GIDについて知って貰いたいというより、GIDの抱えている問題をより普遍的なテーマに昇華させて、それぞれ、観に来て下さった方が「あ~これ私のこと?」「こういう事、私にもあてはまるかも...」 と自分の問題として捉えてもらえるような作品作りを目指しています。
その姿勢は第1回から変わっていませんし、これからも変わらないと思います。
タッチは軽く、なるべくコメディーで!(笑)という方向も変わらないと思います。(勿論GIDがらみのところは真面目に取り上げています)
Q. 月嶋さんのトランス☆プロジェクト以外の普段の生活について、差し支えない程度に教えてください。※どういう日常生活を送っておられるか、など。
えっと 「ラピスラズリ」というバイオリンとのコラボユニットで朗読をしたり、「aj(あじ)の・ひらき」というジャズと演劇のコラボユニットにも参加していたり、他の劇団から呼んでいただいたり...という事でほとんど1年が過ぎています。
日常生活は夜が遅くて睡眠不足の事が多いです。
時間に余裕が出来ると「片づけ祭」に夢中です(笑)
その割に片づいていなくて日々、「なんでだろう?」と思う毎日(笑)
オフの時は大好きなラーメンズ、バナナマン、「水曜どうでしょう」のDVDを見ている事が多いです。
ラーメンズ関係の舞台はほとんど生で観に行っています。時には地方へも...(笑)
あとは活字中毒なのでいつも何かを読んでいます。
本番前は台本を。それ以外は本を読んでいます。
ジャンルは推理ものが多いかも... 小説一般なんでも読みます。あ、コミックも(笑)
Q. トランス☆プロジェクトがもつ他の劇団にはない魅力は何でしょうか?
なんと言っても「人」かな~
メンバーの人数は少ないのですが、人との出会いに恵まれ、様々な方が手伝って下さるという幸運の星の元にあります(笑)
本当に有り難いことですね。
自分たちで「こうしよう」と思う前に人との出会いでボーカルレッスンが始まり、ダンスレッスンも始まり、ピラティスも始まりました。
なにか大きな力に導いてもらっているように、いつも不思議なご縁に恵まれます。
月に一回ミーティングをしているのですが、何かを決める時、メンバーは等しく1票の決定権を持っているのも珍しいかも?
ヒエラルキーがないので、私は代表と言いつつひとりで何かを決める事はほとんどありません。まあ私が頼りない...とも言う?(笑)
Q. GIDは時代の流れと共に当事者の意識も変化しつつありますが、そういった一連の移り変わりをみてどう思われますか?
今、一番心配なのが、低年齢化というか...
早くからカウンセリングにかかるのは良いと思いますが、まだまだ揺れている段階で決めてしまっていないか心配になります。
実際にそういう人(成長してから性自認が変化した)も何人か知っているので、慎重にして欲しいな、と思います。
それとネット環境が急激に進んで、玉石混淆の知識が溢れているのも気になります。
自分に都合の良い部分だけを取り入れてしまわないように気をつけて欲しいなぁ~と思います。
Q. トランス☆プロジェクトの活動を始められてから、そろそろ15年を迎えようとされていますが、今まで長く続いた理由は何だと思いますか?
本当にこんなに長く続いている事に自分でもびっくりしています。
第1回が終わったあと、1ヶ月声が出なくなり、ストレスだと診断されました。
だから、こんなに続くとは思ってもいなかったのです。
これもやっぱり「人」との出会いのお陰だと思います。
ひとりでは絶対、続かなかった。それは間違いないです。
まわりから手を差し伸べて支えてくれる方がいっぱいいて下さったお陰でここまで続いてきました。
いつも側で一緒に苦労(?)して支えてくれる、家族のようなメンバーの存在も大きいです。
勿論、観に来て下さるお客さま、応援して下さる方の存在は言うまでもありませんね。
アンケートなども拝見すると本当に励みになります。
HPにコメントをいただけたりすると本当に嬉しいです。
Q. このインタビューを読んでいらっしゃる読者に向けて、メッセージをお願いします。
トランス☆プロジェクトはGIDの当事者と一緒にGIDを切り口に舞台を作っている日本で初めての劇団です。
試行錯誤しつつ、スタイルは変えても、常により良いものを目指してこれからも進んで行きたいと思っています。
ここにくれば自分らしくいられる、というのもトランス☆プロジェクトの特徴です。
レッスンは見学自由ですので、是非一度いらしてみて下さい。
今 悩んでいる方には 「今すぐ決めなくてもいいんじゃない?」 という選択肢があるという事を忘れないでいただきたいなぁ~と思います。
どこかでお会い出来たら、是非お声をかけて下さい。
そして楽しい事をご一緒しましょう(笑)
お待ちしています。




