2012年に米フェイスブックの最高執行責任者(COO)に就任、2013年に初の著書『LEAN IN(リーン・イン)』がベストセラーとなり、素晴らしいキャリアも家庭も名声も手にしたシェリル・サンドバーグが2015年に夫を亡くしていたことを本書を読んで初めて知った。

 

人生はいつでも「最良の選択肢(オプションA)」を選べるわけではない。「次善の選択肢(オプションB)」を選ばざるをえなくなったとき、人はいかにして打ち砕かれた気持ちを立て直して前に進めばよいのか。

 

本書では、最愛の夫を亡くした悲しみを包み隠さず表現しており、彼女の喪失感や絶望がまっすぐに伝わってくる。また、夫が亡くなってからの心情の変化や、実際に起こした行動が丁寧に綴られており、周りの人のどんな声がけが心に痛く刺さったか、あるいは温かく包み込んだか、どんな行動が実際に立ち直るために効果的だったが明確に伝わってくる。

 

人生は予期せぬことの連続だ。最愛の人の死に限らず、辛く悲しいことがいつ何時訪れるかわからない。また周囲にそうした人がいたとき、どう接したらよいか戸惑った経験のある人もいるだろう。そんなときに本書の内容を知っているのといないのとでは、相手に対する声のかけ方ひとつにしてもずいぶん違ってくるのではないかと思った。良かれと思って発した言葉が思いがけず相手を傷つけていたかもしれないなど、自分の人生を振り返って反省する場面もいくつもあった。
 

共著者である組織心理学者アダム・グラントによる心理学的側面からのレジリエンスのとらえ方や、愛の人の死を乗り越えてきた様々な人の事例など、死にとどまらず「人生で直面する困難をどう乗り越えるか」というテーマで広く読まれてほしい、そんな大切な一冊です。