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フランスの人類学者エマニュエル・トッドは現在の民主主義国家が直面する真の困難は、イデオロギー的、社会学的、心理学的なものであり、個人が集団的に考え、行動することができないという構造的無力性にあると主張しています。自由貿易は外需の追及、際限のない給与の縮小、それが生産コストを低下させ、その結果、内需が低下し、外需の追及につながるとして懸念を持ち、その自由貿易が推進される根拠を今日の経済学者の影響ではなく、人々の行動の「ナルシシスト化」に求めています。
そこでトッドはまずこの自由貿易が及ぼす害悪を保護貿易と拡張的財政政策によって是正することを提案しています。保護貿易によって、給与の再上昇の条件を作り出す、経済学的に言うと実質賃金を引き上げることを指摘しています。国境が開いている限りは、給与は下がり、内需は縮小せざるをえず、途上国の低い賃金の圧力が止まるなら、先進国の所得は再び上昇し始めるということです。所得の上昇は、先進国規模での内需の振興を伴い、内需振興は輸入の振興をもたらします。そして、保護貿易が実務上困難ではないとしても、その実現の条件の中には、ナルシシスト的な心理的姿勢を変えるという前提が含まれます。個人の短期的な利益を自覚的に乗り越えることが要求されます。これは、上から1%の超富裕層においても、全住民の3分の1の、貧困化の過程にある高等教育学歴を有する中産階級においても、同じことが言えます。
しかし、筆者はトッドは経済学の歴史を丁寧に追うべきだと考えています。米国の1930~36年の輸出・輸入は著しく減少しています。この現象はスムート=ホーレー法という法律が1930年に成立したことに起因します。スムート=ホーレー法は大恐慌から米国経済を救えるという間違った信念のもと、自国財に対する需要拡大を促すために関税を大幅に引き上げる目的で成立されました。その結果、米国と貿易関係にあった国は米国財に対する高い関税を課し世界貿易が著しく減少しました。
また、コロンビア大学のジャグディッシュ・バグワティ教授は先進国が賃金水準の低い途上国との自由貿易によって自国の労働者の実質賃金が下がり、貧困が生じているという言説についてこれを裏付ける証拠はないと断言しています。労働者の実質賃金に関する研究に関する研究の大半は、自由貿易が原因で実質賃金が低下したのは1980~90年代までほぼ一貫して、せいぜいほんの一部だと結論していると主張しています。さらに言えば、自由貿易が労働者に無用に悪影響を及ぼすことはなく、技術変化によってつまり、全要素生産性の上昇非熟練労働者の需要が減少するという労働条件の悪化を食い止めると指摘しています。同様に、底辺への競争が生じているという証拠も存在しないと主張しています。それどころか現実には、その是非はともかくも、より高い労働基準を途上国に押し付けようとする政治的圧力が増していると指摘しています。
よくある間違いは、労働集約財(途上国が先進国に輸出する繊維、衣類、靴、玩具など)の自由貿易というと、先進国の市場に途上国からの輸入品が次々と押し寄せ、そのために価格が下落して実質賃金も下がると決めてかかることです。実際には、貧困から脱して急速に成長する国は技術進歩が起こり資本が蓄積されるので、労働集約財の輸出が減少していきます。だから、別の途上国が新たに市場に参加してきても輸出国の数はあまり変わらないのです。前者は資本集約財の輸出国となり、労働集約財を輸入するようになります。したがって、先進国への労働集約財の純輸出高はさほど大きく増加することはありません。何もかもが増加の一途をたどり、押し寄せる輸出品で埋め尽くされるというイメージを思い浮かべるのは現実とかけ離れています。
経済学者のロベルト・フェンストラとゴートン・ハンソンは1972~1990年の期間にアメリカの製造業が労働集約型の部品を海外のサプライヤーに外注した結果、国内の非熟練労働者の実質賃金にどのような影響が現れたかを調べました。そして、このような生産者向けの労働集約型製品の輸入により、実際には労働者の実質賃金は上がったと結論付けています。
また、エドワード・グレッサーはこの問題に関してさらに新しい発見をしています。フォーリン・アフェアーズ誌で報告されたその調査結果は「関税政策はいつの間にか、貧しい者にとって信じがたいほど厳しいものになってしまった。いま、若いシングルマザーは安い衣類や靴を買うとき、中流階級や上流階級の家族が高級店で払うよりも5倍から10倍も高い関税を支払っているのである」。
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