第1次世界大戦を機に各国は金本位制を離脱します。なぜなら、金本位制では通貨供給量が各国の中央銀行により保有する金準備に制約されていたため、戦争による多額の出費を賄うために、中央銀行が金本位制から一旦離脱することが必要であったためです。
金本位制を採用していた諸国の間では、各国の為替レートは金を媒介にして安定化していきました。この安定化のメカニズムをマクロ経済的な視点から見ると以下のように説明できます。
各国通貨量は自国の金準備の量に制約されるために、貿易赤字国(金流出国)ではデフレーションになり、一方で貿易黒字国(金流出国)ではインフレーションになります。これによりデフレーションが進む国では輸入が減り、輸出が進み、インフレーションが進む国では輸入が増え、輸出が減るという、国際間の輸出入を通じた自動調整メカニズムが内包されていると期待されていました。
戦間期の各国は一旦離脱した金本位制に徐々に復帰していきます。その過程で、第1次世界大戦後の世界経済の中心は英国から米国へと移っていきます。第1次世界後の米国は世界最大の債権国となり、敗戦国となったドイツに復興資金を提供し、ドイツは復興資金で経済復興を遂げて賠償金を英仏に支払い、英仏はその資金で自国の復興を行いつつ、米国から提供された戦費を返済する、という資金の流れが生じていました。
この間、ドイツではハイパーインフレが生じています。ハイパーインフレとはフィリップ・ケーガンの定義によれば年率13000%のインフレーションのことを指します。戦後のドイツ政府は比較的穏健な社会主義政党によって構成されたが、この政府はさまざまな理由から軍部および産業界との妥協の上に成立していました。そのために、政府には租税収入によって賠償金支払いなどに必要な財政支出を賄うという意思もなければ能力もありませんでした。政府は財政支出を、政府が発行する大蔵省証券を中央銀行であるライヒス銀行に購入させることによって賄いました。これを中央銀行引受の国債発行というが、それは財政支出を新たに紙幣をすることによって賄うに等しいのです。
このような状況の中で、世界最大の債権国となった米国に金が流入していきます。先ほど金本位制では安定化メカニズムを通じて国内経済が調整され、金流入国から金流出国へと金が流出することで為替レートが安定化することを説明しました。
その理由は、金流入国の通貨当局は、金流入に伴う通貨供給量の拡大に対して自らが保有する他の資産を民間に売却することで自国通貨の拡大を相殺し、必要ならばインフレーションを抑制することができたためです。
金流入国が金流入伴うインフレーションを受け入れなかったために、金流出国は為替レートを維持するために通貨供給量を抑制し、金利を引き上げるという手段をとらざるをえませんでした。これは金流出国の国内経済を引き締め、景気を悪化させることにつながります。
なぜこのような事態が生じていまったのかといえば、金本位制を通じた安定化メカニズムには、金流出国において金本位制を維持するために国内経済を犠牲にするというペナルティが科せられていたのに対して、金流出国では金流入に伴うインフレーションを阻止するペナルティが科せられておらず、このような非対称性を是正するための国際的調整期間がなかったり取り決めがなされていなかったためです。こうして大恐慌が生じます。
Bernanke(2000)によれば金本位制において最も重要な構造的欠陥は金の流出入に必要とされる貨幣政策:対外バランスにおける黒字国と赤字国との非対称性であると指摘しています。理論的には「ゲームのルール」上、各国の中央銀行は、金流入が生じた場合、物価・正貨のフロー・メカニズムを、国内のマネーサプライを増大させてインフレーションを誘発させることを通じ円滑に働かせるよう想定されています。一方で、金流出が生じている国の中央銀行は、マネーサプライを減少させデフレーションを誘発させることが想定されています。実際には対外準備の完全枯渇を回避する必要と兌換性を維持する目的で、金流出国にはこの「ゲームのルール」遵守が強要されました。しかしながらこれとは対照的に、金流入国に対いては国内の目的として望ましいなら金流入を浮胎化させず、また準備を無制限に蓄積させないようにする拘束は、国内の政策目的が許す限り何もなかったのです。かくして、金本位制の運営上において、潜在的にデフレーションの状態に陥るというバイアスが存在したのです。
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