大部屋のひとつ病室の中に運ばれ、

運んできた看護師がナースコールを押し

「スイマセン、チカラ貸してくださーい!」とナースセンターにいる看護師を呼ぶ、

看護師4名ほどの手を借り、「いち、にーの、さん」の掛け声よろしくベッド移動、

マンディのからだは、まるたんぼうの如く、感覚もなく移動後ベッドの上で揺れ動く。

小便の管も、おむつもしたままである。

さっそく、電動ベッドの頭のマークを押し、上半身を起こし、前と左右に視線を移動する。

前の部屋より少し広いようだ、と思い同室の皆さんに挨拶でもしようと首を上げた瞬間、

 「あー最悪、6人部屋の真ん中のベッドじゃねーかよー」

両サイドも向かいの3人も午後の昼寝らしく、寝たままで声は聞こえない。

ただ、右向かいの比較的若い50歳代とおぼしき人は「ンッガー、ガー」と鼾が聞こえる。

昼まっからこれだと夜は「恐ろしい」ことになりそうだ。

あとは、とうに70歳は超えていそうな同室のメンバーである。

マンディは、ここは老人ホームではと錯覚した。

どの患者のベッドの横にも車椅子がたたんでおいてある、皆さん自分では歩行もできないようだ。

さらに悪夢は続く、廊下から若い男性の奇声、「ねえねえ、あんただれだっけ?」を繰り返す大声、

二十代の男性患者、オムツをし、廊下をいざりながら

見舞いの人、付添いの人、看護師、リハビリの先生、歩ける患者、

だれかれまったく構わないで同じ言葉をかける、彼もここの患者らしい、歩行もできない、自分自身も亡

くしているようだ。
              「60センチの目線(ベッドの高さ)」
マンディは手術の傷も癒えないまま、

少しでも速いリハビリが機能回復に有効であるとの主治医の配慮で、

リハビリ病棟兼神経内科病棟に整形外科病棟から転棟させられた。

7階から1階へ降りる、エレベータの生ぬるい換気用天井ファンの空気を吸い、

ガクンという振動を受け、1階の廊下に出る。

エレベータのドアが開くと、一瞬、外の入口が近いので新鮮な空気が、
ねばい口の中と、病院の埃だらけの空気でいっぱいの肺の中に気持ちの良い外の空気が入ってきた、

それでも付き添いの看護師は、「今日も外は暑いんですよー」なんて言う。

そうか、外界はまもなく7月が終わるのである。

もう1ヶ月ちかい入院生活ですっかり時間の流れが頭から消し飛んでいた。

マンディを乗せたストレッチャーは、一般の外来者が通る廊下を移動している、

子供の声やら健康な元気な人の声が脇を通り、すれ違いざまに、覗き込んで行くような視線を感じる
 「見せもじゃない!」自意識過剰なのかも、

マンディは、思わず手にしているタオルを顔にかける、目だけはタオルの隙間から、

天井の白い石膏ボードを眺めながら、廊下の最後の角を曲がるその瞬間「むっ!」とする悪臭、

それは、まぎれもない糞のにおい、

今まで居た病室では嗅ぐ事の無いの糞の臭いはひどい、

思わず手にしていたタオルで天井の蛍光灯の眩しいのにかこつけてまた顔を覆う。「くせー、なんだこの

病棟は、先ほど昼飯を食べたばかりだろう」

この病棟がどんなところかまだマンディは気がついていなかった。
まるで夢を見ていたような感覚。ひどく気持ちが悪く、二度と手術はしたくない
でも、また増殖するんであろう。
とにかく、感覚が無い、足も尻も腹も、他人のものを触っている感覚なのである。
それとともに、ひどい痙攣ののようなツッパリ感覚、腹部と両足、伸てんの痙攣。
けい性、食べたものが出てきそうだ。